【レビュー】『楽器作りの匠たち』 [3:音響関連]
<楽器作りに従事する職人たちの活躍をまとめた本。>
パイプオルガン、チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバの製作者へのインタビュー記事。楽器の素材として重要な「木材」について、その選び方、製作過程、そして音への影響について様々なコメントがあります。
木を使った楽器を扱っている方にはぜひ一読をおすすめしたい一冊。
永田穂氏による「響きをつくる」の記事も、「好ましい音響とは何か?」を考える上で参考になります。
音響について 美しい音の響きとは?
<メモ>
・パイプオルガン マノ・オルゲバウ 松崎譲二・中里威
パイプオルガンではナラの木を使う。節のない素直な木を選ぶ。外国産の木材は、日本の風土に慣らすために日本産の木材よりも長く寝かせてから使わなくてはならない。
発音が速いと鋭い音に、遅いと柔らかい甘い音に聞こえる。
“雑音”が入っていないと、生きた楽器の音にならない。
・チェンバロ 佐藤裕一
木の乾燥については、水分と樹脂分の両方について考えなければならない。材が厚くなればなるほど樹脂分の安定に時間がかかる。
倍音のコントロールが大事。欲しい倍音と欲しくない倍音がある。
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音楽の匠シリーズ 楽器づくりの匠たち ヴィオラダガンバ・チェンバロ・パイプオルガン
- 作者: 「楽器の匠」編集委員会
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 2004/04/21
- メディア: 単行本
音楽の匠シリーズ 邦楽器づくりの匠たち 笛、太鼓、三味線、箏、尺八
- 作者: 奈良部和美
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 2004/06/07
- メディア: 単行本
まるごとピアノの本 足立博著 [3:音響関連]
ピアノの構造と音の関係に興味を持ったので、この本をチェックしてみました。
ピアノメーカーによりピアノの設計や材料選択に違いがあり、それがピアノの音色や音の反応性の差につながっている点が面白いです。ギターもピアノもスプルースの響板を通じて弦の振動を空気中に伝達する点が共通ですので、ギターの構造と音色を考えるうえでも参考になりました。
<メ モ>
・響板の見方
いい響板は木目が細かく揃っていて、全体に白っぽい色をしている。無垢板か合板かを判別するには、響板を貫通している穴の木口面を観察してみる。(合板は板がサンドイッチになっている。)
響板を軽くノックした時に、コーンコーンと澄んだ音が長く響くのは優れた響板で、ボテッといった音で消えてしまうのはダメ響板。
・音色のチェック
半音階を繰り返し弾いてみて、音色にふぞろいがないか、音質が極端に変わっていないか確かめる。澄んだ音、濁った音、硬い音、柔らかい音が音程によってばらばらに出ていないか調べる。
済んだ柔らかい音か、あるいは澄んだ硬い音がすべての音階で出ていて、それがよく伸びるピアノが理想的。
~ピアノメーカーの音の傾向と特徴~
・ヤマハ
とても品質が揃っている点が特徴。タッチはとても滑らかで、多少乱暴に弾いても音が乱れない。
ドイツのピアノにはドイツ伝統の重厚な雰囲気、フランスのピアノにはフランスの粋な香り、イタリアやアメリカのピアノにはそれぞれの明るい気風がある。その点、ヤマハのピアノは渋くて地味な響き。
・カワイ
哀愁をおびた日本的な香りがあるが、同時に色彩があり華がある。
・シュバイツアスタイン
さまざまな特許が織り込まれた手作りピアノ。
・山本DS響板:響棒に手彫りでダイヤモンドカットの加工を施して音響特性を改善。普通の響棒の3~4倍の持続音。
・スパイラル特殊響板:響板に放射状に響棒を配置。低音、中音、高音の音色を均質化。
・シュベスター
今日ではルーマニア産の響板が入手困難になったため、アラスカ産のスプルースが使用されることが多いのだが、これはピアノの響板としては少し硬すぎる問題がある。シュベスターでは、入手しにくいが響板としては理想とされる北海道のエゾマツを採用している。
最近ではピアノの音量を増すため、弦の張力を平均90kg程度にまで高めることが多いのだが、シュベスターの場合は平均70kg程度に抑え、なおかつ豊かで華麗な音が出せるように工夫されている。
・スタインウェイ・アンド・サンズ
音色は美しく、クラッシックやジャズ、ポップスなどどんな音楽にも対応できるのが特徴。
材料と部品にはすべて響きに貢献するものだけを厳選して使用し、また接合部には木製のダボだけが使用されている。使用される木材は厳選された無垢の木材を約2年間自然乾燥して熟成を待って使用される。
響板には大きな特徴があり、端にいくに従って薄くなるように加工され、独特のクラウン(湾曲した構造)を構成している。
スタインウェイはフレーム(鉄骨)も鳴らせると言われる。
デュープレックス・スケール:弦の前後(駒からピッチピンまでの間、また駒からチューニングピンまでの間)に共鳴する部分を設けている。
・C.ベヒシュタイン
美しい音色を引き出すために、タッチに神経をはらう必要があるピアノ。特に低音や中低音はとても豊かに鳴るため、高音や中高音とのバランスを考えながら左手を制御する必要がある。
箱全体が共鳴するため、音の立ち上がりは比較的ゆったりとしていて、そのぶん音の持続はかなり長いというパイプオルガンに似た特性を持っている。
構造的な特徴として、他のほとんどのピアノメーカーのように金属フレームやケースを鳴らすというのをあえて避け、響板だけを純粋に鳴らすよう設計されている。こうする目的は、音の反応をできるだけよくしようというもので、これが音の立ち上がりの鋭さやタッチに敏感だという特性の鍵になっている。
・ベーゼンドルファー
響板は、ヨーロッパ産の優れた部材が入手しにくくなり、今日ではおもにアラスカ産のスプルースが使用されるのが普通で、これは響板としては少し堅すぎる点が指摘されているが、ベーゼンドルファーの場合にはいまなおアルプス山麓のフィヒテ(トウヒの一種)が使用されている。
ピアノ全体を楽器ととらえていて、響板だけを響かせるのではなく、ピアノケース全体を共鳴箱として響かせるように設計されている。ただ金属フレームは共鳴体としてではなく、あくまでフレームとして考えて、ここは頑丈に造って純粋に木の部分だけを楽器としてとらえて響かせようという設計。
金属フレームも鳴らせようとするスタインウェイや、とくに響板だけの響きを追求したベヒシュタインとは異なる設計思想。
他社のピアノでは、ケース自体は頑丈な合板をグランドピアノの形に大きな力で曲げて造られるのが普通で、これは弦の張力を支える役目も担っている。しかし、ベーゼンドルファーの場合には、合板は使用せずに響板と同じフィヒテの無垢版がケースにも使用されている。しかも、ケースに緊張を与えないために板の内側に細かい切込みを入れて、いわばダンボール上に成型して、無理に曲げることなくグランドピアノの形に造られている。このような構造だと、弦の張力を支える力はケースにはないため支柱(ピアノの屋台骨)で支えることになるのだが、ベーゼンドルファーの場合には、この部分にも他社のようにカエデ系の堅くて重い部材を使用せず、あえて響板と同じフィヒテを使用して響きを重視した設計になっている。
さらに、フィヒテで張力を支えるために、その支柱の構造は、家の床組みのように頑丈な井桁状に組まれている。また、使用される木材は今日では乾燥室で熱や高周波をかけて短時間で強制的に乾燥させることが多いのだが、ベーゼンドルファーの場合には、約六年間屋外で天然乾燥させて、そのうえ乾燥室で微調整している。
金属フレームについても、鋳造後約六ヶ月間は放置して、材質が安定してから使用している。
日本のピアノ100年―ピアノづくりに賭けた人々 [3:音響関連]
オルガン制作に端を発した日本のピアノ製造の歴史をたどった本。戦前は景気の動向や世界大戦にほんろうされ、戦後はピアノの輸出大国になった日本の姿が描かれています。特にヤマハにおける製造工程の変遷が興味深いものがありました。
◎メモ
・スタインウェイは合理的な生産体制を導入した。木材のシーズニングといった感想技術を科学的に分析して品質管理を徹底していた。
・1915年にスタインウェイで1年間学んだ福島琢郎のコメント。
日本のエゾ松で製作する響板は、アメリカのそれとは違っていて、木が堅い。「日本で採れる木のものは、どれも皆何と言い表していいか、 カキクケコ というような音が出る。あちらのは パピプペポ のような音が出て、同じこしらえ方でありましてもそういう風で、日本の木そのものがどうも膨らみのある音が出ない。」
・日本楽器の川上嘉市の提案で、日本楽器では1920年頃に振動音をマイクで拾ってオシログラフで解析する方法を導入した。
・大橋幡岩による「シュレーゲル氏※報告書より」から。
「日本に産する木材は、大陸に産する木材に比して樹脂多く、かつその生育の状態および性質、組成を異にするが故に、これを響板に使用し、標準的弦の長さを与うるも、予期せる如き充分なる共鳴を得る能わず、音が響板に固着して、いわゆる尻消えとなる傾向あり。」
→このため、弦をやや長くして問題を解決した。
※ピアノ製作の技術指導のため日本楽器に招聘された技師。
・原信義のコメント
初期の日本のピアノは、特に「側鳴り」、つまり近くで聞けば大きな音がするのに、少に離れると音が割れる欠点がある。
・響板の乾燥方法と音の関係
ヨーロッパに留学した杵淵直知は、日本のピアノと西洋のピアノの音の違いは、主に木材の取り扱いにあると考えた。「木というものは野性のもので、それを野性のままでは使えないから、日本では殺し気味にして使う。ところが、ヨーロッパではその野性の特色を生かしながら飼い慣らして使う。」
ヨーロッパでは場合によっては10年以上も木材を寝かすが、日本ではわずかな時間に製品化してしまう。
【例】
[グロトリアン]
10ミリの厚さに仕上がる響板をまず16ミリに製材し、「1センチ1年」といって約1年半にわたって天然乾燥したのち、四週間にわたって40℃に達しない温度でゆっくりと含水率5パーセントまで水分を落とし、それからさらに38-9℃に保ってブラインドを下ろした材料倉庫で六年間にわたって寝かせる。
[日本のメーカー]
響板が厚すぎるとピアノが鳴らないことから、製材時で11ミリ、仕上がりで8.5~9.0ミリとするピアノが多く、乾燥の方法にしても、アップライトの普及品の場合、120℃の高温でわずか12時間で含水率を6パーセントまで落とす、といった方法がとられることも珍しくなかった。
・実験計画法
昭和三十年代前半から日本楽器では「実験計画法」を取り入れていた。また「よい音とは」という命題を定量化するために、「音響心理学」「音響生理学]を使って、計測器では得ることのできなかった芸術的な評価を数値化する方法論を確立していった。
以前、ヤマハにおけるアコースティックギターの開発について調べていた際、開発の初期メンバーに木本氏、玉有氏といったピアノの開発を経験した方が開発に携わっていたことや、実験計画法を使って構造がギターの音に及ぼす影響を調べたことを知りました。ヤマハのギターにはピアノ開発の技術が大きな影響を与えていたようです。
ICレコーダー オリンパスDS-750 録音テスト&レビュー(音源あり) [7:オーディオ機器のレビュー]
オカリナ教室を主催している母に誕生日プレゼントの希望を聞いたところ、ICレコーダーのリクエストがありました。
母はオカリナ練習の録音用にエレクトレット式コンデンサマイクとMDの組み合わせで録音しています。MDが何度か壊れてもその度に買いなおしていたのですが、MP3プレーヤーが普及してMDプレーヤーを生産しているメーカーが少なくなってきたこと、またお稽古用にICレコーダーを使っている生徒さんが多いことから、ICレコーダーを選んで欲しいとのこと。
自分はソロ・ギターの録音機会が多いので、さっそく録音機能を試してみました。
録音機能で一番こだわっているポイントは 録音レベル調整しやすいかどうか という点。
◎録音ファイル(リニアPCM形式、44.1kHz)
アコースティックギターのアルペジオ演奏。ギターはベフニック。
(クリックすると演奏を聴くことが出来ます。)
【録音設定】
ギターに対して17フレットを斜め上方から狙う位置にマイクを設置
録音モード:PCM非圧縮モード、44.1kHz
録音ファイル処理:曲の前後をカット後、イントロとエンディングにそれぞれ
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◎録音後の感想
ICレコーダー内蔵のマイクとNT-4の音質に極端な差は感じられません。
ローカットフィルターをオフにした場合、NT-4の方が低音が強調され、豊かでまろやかな音質になる反面、ややぼんやりとした音色に。ICレコーダーのマイクはやや硬めのかっちりした音。この違いは、マイクの特性の差でしょうか。(録音時の最低周波数は、マイクジャック録音時で40Hz、内蔵ステレオマイクで70Hz)
ローカットフィルターをオンにすると、いずれのマイクで録音した場合も低音部のモワモワ感が消えてすっきりした音になる反面、やや固めの音色になるようです。
・ ・ ・
手軽に録音できるモデルですが、音質はかなり満足できるレベルですね~。
今回は試す時間がありませんでしたが、本機はDiMAGIC社の指向特性制御技術「DVM」により、内蔵マイクの指向性を切り替え、広がりのある録音や前方の音を強調した録音が可能なので、指向特性を変えると音がどう変化するか興味のあるところです。
・・
◎レビュー
再生機能を使ってみると、「A-B区間リピート機能」「録音・再生」がボタンひとつで操作できるので、かなり便利。再生速度調整が可能なので、英語の語学学習に使いやすいと思います。
再生速度を2倍まで高くしてみましたが、音程は変わりません。他のMP3プレーヤーでは再生速度を変えると、それに応じて音程が変化するモデルがほどんどですので、このモデルは語学学習に使いやすそうです。
ファイルのメンテナンスに関しては、パソコンに接続するとフォルダを使ってUSBメモリーとまったく同じ感覚で操作できるので、ファイルの整理がやりやすくなっています。MP3プレーヤーとして使うために曲をコピーすることも簡単に出来ます。
本体側面部にある「再生」「停止」「録音」ボタン。
片手で操作できて便利。
OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-750
- 出版社/メーカー: オリンパス
- メディア: エレクトロニクス
OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-700
- 出版社/メーカー: オリンパス
- メディア: エレクトロニクス
ソニーのハンディカム:HDR-HC3の修理 [5:その他]
ギターの演奏収録に使っているソニーのハンディカム(HDR-HC3)が故障したので、修理に出しました。これは2006年製のモデルで、FullHD画質の録画が可能。
症状は、カセットを入れるスロットのふたが「カチッ」と閉まらず、開いたままになってしまう、というもの。機械的な故障の様子。
この商品はネットで購入したもので、特に修理保障期間の延長も行なっていなかったので、ソニーの「修理品受付窓口検索」から修理を受け付けてくれる近所のお店を探してみました。
http://www.sony.jp/navi/shop/search_s.html
上記サイトで見つけた近所のソニーショップに持ち込んで、見積もりを取ってもらったところ、19,950円(税込)と連絡が来ました。最新版の新品を買うとなると6万円以上かかるので、修理をお願いすることに。
先週、修理が終わったと連絡が。テープを作動させる部分のユニットが全交換されていました。
【交換部品】
・メカデッキASSY 故障状態:動作不安定
・ドラムASSY DEH-33E-R 故障状態:不良
【修理代金】
19,950円(税込み)
【修理期間】
2009年9月18日受付~2009年9月29日修理完了
(注:期間中に祝日3日含む)
修理伝票の一部。
ちょうど娘の運動会の数日前だったので、ぎりぎり間に合って助かりました。使ってみたところ、特に問題なく動作しました。
取り外したユニットが付いていたので、しげしげと眺めていました。かなり複雑な作りで、いかにも「ノウハウの塊」という感じのオーラを発しています。
取り外されたカセットのユニット。
今後もしばらく家族のイベントやギターの動画撮影に使っていくつもりです。