洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵 文・洲之内徹 [5:その他]
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銀座の「現代画廊」を経営していた美術エッセイストの洲之内徹がコレクションした絵の画集。
それぞれに短文が添えられており、絵と文章がお互いを引き立てています。
音楽や絵をたしなむ身として、「はっ」とさせられる文章を拾ってみました。文章中の「絵」を「音楽」に置き換えてみると、ひとつひとつの言葉に考えさせられるものがあります。
<ノート>
どんな絵がいい絵かと訊かれて、ひと言で答えなければならないとしたら、私はこう答える。
「買えなければ盗んでも自分のものにしたくなるような絵なら、まちがいなくいい絵である」と。
写真家の土門拳さんが鳥海さんの「うずら」を画廊に売りにきたとき、私はまさにそういう気持ちになった。
松本俊介の世界のこの静かさと美しさは、運命に従順な物の持つ静かさと美しさではあるまいか、という考えが浮かんできたのであった。
所詮、絵かきは絵で物を言わなければならない。それが絵かきの宿命である。
わたしは常々、絵というのは生き物で、一枚の絵にはその絵の運命があると思っている。
絵は絵だというのが、いうならば私の絵画論の全部である。絵が自分で語りかけてくれるもの以外は、ほんとうは、私はあまり信用しない。
展覧会を見に行けば、大きな声を出した者が勝ちというような絵がずらりと並んでいる。この居心地の悪さ。どちらを向いても私は生きた心地がしない。どこにもこの身を託すことのできるリアリティーがない。
(小野幸吉の絵について) その率直さにうたれた。そして、人間が率直であることのできた時代というものがあったのだ、とつくづく思った。率直ということは美しい、いまの世の中にないのはそれなのだ。
売れないことは、画家にとって、決して不幸とは言えない。(・・中略・・)他人の眼が絵の中に入ってくる。心ある画家にとって、他者の眼との戦いこそ、真の戦いであろう。
いまの絵が概してつまらないのは、要するに、この「ね、見て、見て、」がいけないのだと思う。
(2009/6/14記)
熱血!アコギ塾 フィンガーピッキング編 (2007年) [1:演奏技術およびギター関連]
アコースティックギターのフィンガーピッキングに関する演奏講座を中心に構成されたムック。
ちょうどわたしがアレックス・デ・グラッシの「Turning: Turning Back」の練習を始めた頃に出版され、彼のインタビューとギター演奏レクチャーが載っていたので購入しました。
イントロには、トミー・エマニュエルの来日ライブレポートや、彼へのインタビューを元に構成したハイ・テクニカル・ギター講座があるので、トミーファンのソロ・ギター弾きには必携の内容。
他の特集記事として、「打田十紀夫のフィンガー・スタイル・ブルースギター講座」「Masa Sumideのリズム&グルーブ・ギター講座」もあります。
KW:Tommy Emmanuel、奏法、練習、ピッキング、サムピック、ギャロップ奏法、ギャロッピング奏法、ハーモニックス奏法
(2009/5/30記)
熱血!アコギ塾 フィンガー・ピッキング編 (シンコー・ミュージックMOOK)
- 作者:
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック
- 発売日: 2007/10/24
- メディア: ムック
【ご参考】
Alex de Grassi の「ターニング:ターニング・バック」を練習するために、こちらの楽譜とDVDを購入しました。
楽譜:Best of Alex De Grassi (Guitar Recorded Versions)
Best of Alex De Grassi (Guitar Recorded Versions)
- 作者:
- 出版社/メーカー: Hal Leonard Corp
- 発売日: 2007/01
- メディア: ペーパーバック
DVD:Alex Degrassi in Concert [DVD] (2007)
Alex Degrassi in Concert [DVD] [Import]
- 出版社/メーカー: Mel Bay
- メディア: DVD
気ままに絵のみち 熊谷守一 (別冊 太陽) [5:その他]
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ソロ・ギターの曲に対して、「いい曲だなぁ~」と自分が判断する基準のひとつに、「聴いていると音楽を忘れてふっと絵が浮かんでくるもの」というのがあります。
「じゃあ、どういう画家が好みなの?」と問われたら、まず挙げたいのが熊谷守一。
飄々(ひょうひょう)として枯れた構図に見えますが、じっと眺めているとなんともいえない力強さを感じる不思議な画風が魅力です。
わたしが熊谷守一の絵を知ったのは5年前のこと。
たまたま立ち寄った水戸にある茨城県近代美術館の展覧会でした。
その日は倉敷にある大原美術館の所蔵品が展示されていて、そこに展示されていた「陽の死んだ日」という作品に出会ったことがきっかけです。
それまで熊谷守一という画家のことはまったく知らなかったのですが、この絵をみた瞬間に「!」となってしばらく立ち尽くしてしまいました。
・熊谷守一「陽の死んだ日」(1928) [大原美術館所蔵]
http://www.ohara.or.jp/200707/jp/1_web/2/exh/006.html
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熊谷守一は音楽好きで、音楽家の信時潔と交流があり、彼の影響で音の研究にのめりこんだ時期があったということです。
「気ままに絵のみち 熊谷守一」によれば、『絵を描かずに、音の振動数の計算に熱中したのは、長男が生まれる前後のことだ。信時に借りたドイツ人学者の本から興味を持ち、無数にある音の組み合わせの振動数の計算ばかりにとうとう一年ほども費やした。』とあります。
年表によれば、この時期は関東大震災のあった1923年前後に当たります。日本では1925年にラジオ放送が始まっていますので、まだ真空管を使ったオーディオ機器が普及していない時代。
彼はいったいどういう本を使って、どういう計算をしていたのか、興味のあるところです。
ドイツ人学者で音響に関する研究を行なった人物といえば、音色が楽音に含まれる倍音の種類、数、強さによって決定されることを明らかにしたヘルムホルツが思い浮かぶところですが・・・。
(2009/6/2記)
日本経済新聞の『私の履歴書』に熊谷守一が掲載した文章をまとめた「へたも絵のうち」を読んでみたところ、彼が絵を書かずに没頭していた音の研究に関して詳しい記述がありました。
・・・今でも妻がよく話すのは、音の振動数の計算のことです。ドイツのヘルムホルツという学者がこの道の権威で本を書いているのですが、それを信時潔に貸してもらって読んだら、なかなか複雑でむずかしい。音というものは高い低いによって振動数が違う、高い音は波の数が多く、低いのは少ない。二つ以上の音を同時に出すと、その波がいろいろ入り組んでくる。その入り組み方によって、きれいな音やきたない音ができる---とまあ、そういう話なのです。
面白くなって、その音の組み合わせの、それぞれの振動数をいろいろと計算しました。音の高低は何段階にも分かれていて、その組み合わせも無数といっていいほどある。それを順に計算していきました。しかしとりかかると果てしがない。夜静かになってから夜ふかしして計算し続け、毎晩続けても、まだ次から次へと組み合わせはあります。とうとう一年ほど、ほかのことはあまりやらずに、この計算にせいを出してしまいました。このときは妻に、「そんなむずかしい計算ばかりして、生活の計算はいっこうにしない」といわれました。 (「へたも絵のうち」熊谷守一より)
(2009/12/12記)
こちらの自伝もおすすめです。
「ハンディ・レコーダー 録り比べ」(サウンド&レコーディング・マガジン 2009年4月号) [2:録音技術関連]
片手で扱える大きさであり、かつステレオマイクを備えるコンパクト・レコーダーを10種類集めてレビューした記事。
録音音質のみならず録音レベル設定操作感や付加機能についてもレビューが欲しいと思っていましたが、これらの点についても言及されていて、参考になりました。
<比較対象機種>
ALESIS ProTrack (アレシス)
EDIROL R-09HR(エディロール)
MARANTZ PMD661 (マランツ)
M-AUDIO Micro Track II(Mオーディオ)
OLYMPUS LS-10 (オリンパス)
SONY PCM-D50 (ソニー)
TASCAM DR-7 (タスカム)
YAMAHA Pocketrak CX (ヤマハ)
ZOOM H4N (ズーム)
KORG MR-1 (コルグ)
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わたしは将来的な録音システムとして、手持ちのステレオ・コンデンサ・マイク(Rode NT-4)にファンタム電源を供給できるレコーダーとしてズームのH4N(H4 next)の購入を考えています。この記事中でH4Nが取り上げられていたので、他にもっと好ましい録音機はないか調べるために、アマゾン経由で取り寄せまてみました。
ファンタム電源を供給できるハンディ・レコーダーはズームのH4だけしかないと思っていたのですが、現在では他にもマランツ PDM661、アレシス Pro Trackにも同様の機能があることを初めて知りました。
アレシスのPro TrackはiPodとドッキングすることを前提とした設計で、とてもユニーク。もしiPodを持っていたら、こちらを選んでいたかも・・・。
惜しいのは、ファンタム電源供給機能を持つタスカム DR-100 のレビューが商品発売前のために間に合わなかったこと。
ファンタム電源供給機能を考慮せずに選ぶとすれば、価格と機能のバランスからローラーンドのEDIROL R-09HRを使ってみたいと思いました。
ローランドからもファンタム電源付きのレコーダーが出てくれないかなぁ。。。
(2009/5/28記)
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・EDIROL R-09HR
製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/R-09HR/
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Roland 24bit WAVE/MP3 RECORDER R-09HR
- 出版社/メーカー: ローランド
- メディア: エレクトロニクス
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・TASCAM DR-100
製品情報
http://www.tascam.jp/list.php?mode=99&mm=9&c2code=01&c3code=02&scode=09DR100G05
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TEAC インタビュー・業務用録音に TASCAM DR-100 PCMレコーダーフラッグシップモデル DR-100
- 出版社/メーカー: ティアック
- メディア: エレクトロニクス
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・ZOOM H4N(next)
製品情報
http://www.zoom.co.jp/japanese/products/h4n/
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・ALESIS Pro Track
製品情報
http://www.alesis.jp/products/protrack/
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・MARANTS PROFESSIONAL PMD661
製品情報
http://www.dm-pro.jp/products/portable/pmd661.html
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銘器の音 - アコギ103本のサウンドサンプル集 - [2:録音技術関連]
ギター雑誌「アコースティック・ギター・マガジン」に連載されていたギターサウンドのサンプル集。
この本のレビューにソロ・ギター録音のノウハウが掲載されているとネットのレビューに出ていたのでAmazonで購入してみました。
スーパーバイザーの小倉良男氏とエンジニアの町山俊宏氏のコンビを軸に、「ソロギターのしらべ」で有名な南澤大介氏をはじめ、日本の有名なギタープレーヤーをゲストに迎えて様々なギターの音を録音しています。付属のCDには掲載されているギターのすべての音が収録されており、音色を比較することができます。
たいていの本ではレコーディング時のギターのセッティングについてはせいぜい使用したマイクの種類とオンマイク・オフマイクの違いが書かれている程度。しかし、「銘器の音」ではギター録音時のマイクの配置について多くのイラストや写真を交えて解説されているので、自宅での録音方法を決めるうえでとても参考になりました。音源からマイクまでの距離の他に、横方向から録音状況を撮影した写真により高さ方向の位置も分かります。
ギターの音色に関しては、文字による表現に加えてスペクトルアナライザーによる周波数分布による鳴りの比較があるのも本書の特徴。特定の周波数が全体の音色に及ぼす影響を知ることにより、録音したギターの音色調整に応用できそうだ、と感じました。
録音に関する小特集として、町山俊宏氏による「マイキング」「コンプレッサー」「イコライザーとリバーブ」のコラムがあります。
2007年1月の発売から2年以上経過しているので、興味のある方は在庫のあるうちに入手しておくことをおすすめします。
(2009/5/30記)
銘器の音 アコギ103本のサウンド・サンプル集 (アコースティック・ギター・マガジン・プレゼンツ)
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2006/12/13
- メディア: ムック