「ハンディ・レコーダー 録り比べ」(サウンド&レコーディング・マガジン 2009年4月号) [2:録音技術関連]
片手で扱える大きさであり、かつステレオマイクを備えるコンパクト・レコーダーを10種類集めてレビューした記事。
録音音質のみならず録音レベル設定操作感や付加機能についてもレビューが欲しいと思っていましたが、これらの点についても言及されていて、参考になりました。
<比較対象機種>
ALESIS ProTrack (アレシス)
EDIROL R-09HR(エディロール)
MARANTZ PMD661 (マランツ)
M-AUDIO Micro Track II(Mオーディオ)
OLYMPUS LS-10 (オリンパス)
SONY PCM-D50 (ソニー)
TASCAM DR-7 (タスカム)
YAMAHA Pocketrak CX (ヤマハ)
ZOOM H4N (ズーム)
KORG MR-1 (コルグ)
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わたしは将来的な録音システムとして、手持ちのステレオ・コンデンサ・マイク(Rode NT-4)にファンタム電源を供給できるレコーダーとしてズームのH4N(H4 next)の購入を考えています。この記事中でH4Nが取り上げられていたので、他にもっと好ましい録音機はないか調べるために、アマゾン経由で取り寄せまてみました。
ファンタム電源を供給できるハンディ・レコーダーはズームのH4だけしかないと思っていたのですが、現在では他にもマランツ PDM661、アレシス Pro Trackにも同様の機能があることを初めて知りました。
アレシスのPro TrackはiPodとドッキングすることを前提とした設計で、とてもユニーク。もしiPodを持っていたら、こちらを選んでいたかも・・・。
惜しいのは、ファンタム電源供給機能を持つタスカム DR-100 のレビューが商品発売前のために間に合わなかったこと。
ファンタム電源供給機能を考慮せずに選ぶとすれば、価格と機能のバランスからローラーンドのEDIROL R-09HRを使ってみたいと思いました。
ローランドからもファンタム電源付きのレコーダーが出てくれないかなぁ。。。
(2009/5/28記)
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・EDIROL R-09HR
製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/R-09HR/
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Roland 24bit WAVE/MP3 RECORDER R-09HR
- 出版社/メーカー: ローランド
- メディア: エレクトロニクス
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・TASCAM DR-100
製品情報
http://www.tascam.jp/list.php?mode=99&mm=9&c2code=01&c3code=02&scode=09DR100G05
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TEAC インタビュー・業務用録音に TASCAM DR-100 PCMレコーダーフラッグシップモデル DR-100
- 出版社/メーカー: ティアック
- メディア: エレクトロニクス
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・ZOOM H4N(next)
製品情報
http://www.zoom.co.jp/japanese/products/h4n/
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・ALESIS Pro Track
製品情報
http://www.alesis.jp/products/protrack/
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・MARANTS PROFESSIONAL PMD661
製品情報
http://www.dm-pro.jp/products/portable/pmd661.html
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銘器の音 - アコギ103本のサウンドサンプル集 - [2:録音技術関連]
ギター雑誌「アコースティック・ギター・マガジン」に連載されていたギターサウンドのサンプル集。
この本のレビューにソロ・ギター録音のノウハウが掲載されているとネットのレビューに出ていたのでAmazonで購入してみました。
スーパーバイザーの小倉良男氏とエンジニアの町山俊宏氏のコンビを軸に、「ソロギターのしらべ」で有名な南澤大介氏をはじめ、日本の有名なギタープレーヤーをゲストに迎えて様々なギターの音を録音しています。付属のCDには掲載されているギターのすべての音が収録されており、音色を比較することができます。
たいていの本ではレコーディング時のギターのセッティングについてはせいぜい使用したマイクの種類とオンマイク・オフマイクの違いが書かれている程度。しかし、「銘器の音」ではギター録音時のマイクの配置について多くのイラストや写真を交えて解説されているので、自宅での録音方法を決めるうえでとても参考になりました。音源からマイクまでの距離の他に、横方向から録音状況を撮影した写真により高さ方向の位置も分かります。
ギターの音色に関しては、文字による表現に加えてスペクトルアナライザーによる周波数分布による鳴りの比較があるのも本書の特徴。特定の周波数が全体の音色に及ぼす影響を知ることにより、録音したギターの音色調整に応用できそうだ、と感じました。
録音に関する小特集として、町山俊宏氏による「マイキング」「コンプレッサー」「イコライザーとリバーブ」のコラムがあります。
2007年1月の発売から2年以上経過しているので、興味のある方は在庫のあるうちに入手しておくことをおすすめします。
(2009/5/30記)
銘器の音 アコギ103本のサウンド・サンプル集 (アコースティック・ギター・マガジン・プレゼンツ)
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2006/12/13
- メディア: ムック
シャルランという名のレコード 津守健二・菅野沖彦著 (暮しの手帖 第85号 昭和41年7月5日発行) [2:録音技術関連]
「シャルラン」のレコードを通じて、レコードの作り手がどうあるべきかを論じた、録音技師アンドレ・シャルランのレーベルのレコード紹介記事。
『暮しの手帖』ではレコード推薦盤の記事が昔から連載されていましたが、ここではレコードだけでなく「録音」に対するの考え方について触れられていたので、取り上げてみました。
<ノート>
・いい録音
いい録音をするためには、機械の欠点やくせをのみこんで、それをうまく利用する。
・肝心なこと
何よりも肝心なのは、機械を扱う技術者たちの「耳」。
音楽を正しくききとり、演奏家がそれをどういうふうに表現しようとしているか、それを鋭く感じとる鋭敏な「耳」がなければ、どんなりっぱな機械を使ったところで、けっしていい録音はできない。
・シャルラン・レコード(CHARLIN RECORD)
フランス人のアンドレ・シャルランというすぐれた録音技師が一人でいい演奏を集め、録音し、レコードを発売している。
・推薦盤
「オルガン芸術の極致 第1集」
「パリのロンド」
ベートーベンの「ピアノ・ソナタ集」
「ヴィヴァルディ バッハ」
モーツアルトの「アルバのアスカニオ」
フォーレの「レクイエム」
(2009/5/22記)
アコースティック・ギター・ブック 4(1996年)(『おとを録る』) [2:録音技術関連]
ギタームック「アコースティック・ギター・ブック 4」に収録されている、ギターの録音についての特集記事。(タイトルは『おとを録る』)
初心者向けの録音機として、テープレコーダー、MDレコーダーが、高級機としてDATを使ったデジタル・マルチ・レコーダー(ALESIS ADTATxt、価格はなんと50万円!)が紹介されています。
この本が世に出てから現時点で13年が経過しましたが、その間にレコーダーとデジタル音源編集に関する環境は大きく向上した一方で、編集用のパソコン、録音用のマイクやデジタル録音機器の価格は大幅に低下しています。
当時と比べれば恵まれた環境にいるわけですから、ちょっと頑張ればいい音が録音できるのではないか・・・と考えたのが、当ブログを立ち上げるきっかけのひとつでもあります。
<ノート>
・マイクでギターを狙う位置
1.サウンドホールの少しネック寄り。(17フレットあたり)
2.ブリッジのやや下の位置をターゲットに、下側から狙う。
・南こうせつのアルバム・レコーディングのために来日していたナシュビルのレコーディング・エンジニア、パット・マクマキン(Pat McMakin)のコメント
できるだけEQやエフェクトを使わず、生の音で録る。
ほんわかした音ではなく、アグレッシブにガッツのある音を録るようにしている。
マイクは一本だけ使う。ボディの右手の方からサウンドホールに対して斜めにセットしてあまりEQをかけないで、できるだけストレートに録る。低音が録りたければ低音の方に、高音が録りたければ高音の方にマイクを向ける。
良い音を録る最も基本となるのは、まず良いギターであること、そしてそれをプレイするギタリストの腕が良いこと。
ギタリストはきれいな音を出せるように練習すること。リズムを刻むときは単純にして、しかもきれいにはっきりと音が出るように練習すること。
アコースティック・ギターを録るアイデアは、1970年代のジェームス・テイラーの音から来ている。音質そのものが気に入っている。良い音が出るということは、彼のはっきりした弾き方にあると考えている。
・ ・ ・
→ジェイムス・テイラーの音に関しては、別ページにある「エンジニア直伝!レコーディング・テクニック大全」の中でエンジニアの中村文俊氏が同じく良い音のCDとしてジェイムス・テイラーの「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves )」のギターの音を紹介しています。
『アルペジオがざくざくした感じの音にしてあるんですけど、歌の邪魔を全然していない。歌を邪魔しないでこれだけクセのある音が出せるのは、なかなかすごいことだと思います。響いた感じはしないし、どちらかと言えばドライなサウンドですね。フィンガリング・ノイズも、良い感じで出ています。この曲の録音自体は新しいのですが、昔のアコギの音はこういうざくっとしているのが多いんですよね。オーバーEQしてるんじゃないかっていうくらい、作り込んであります。』
「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves )」が収録されているアルバム(ジェイムス・テイラー・グレイテスト・ヒッツ)
ジェイムス・テイラー・グレイテスト・ヒッツ(紙ジャケット仕様)
- アーティスト: ジェイムス・テイラー,Dozier,Holland,キャロル・キング
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2006/12/27
- メディア: CD
- ↑
(試聴可)
ジェイムス・テイラー・グレイテスト・ヒッツ(紙ジャケット仕様)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2006/12/27
- メディア: CD
The Acoustic Guitar 6 (1997年) (ソロ・ギターの録音) [2:録音技術関連]
1990年代に発行されていたアコースティックギターのムック。
この「アコースティック・ギター 6」では吉川忠英氏と岡崎倫典氏によるオリジナル曲が収録されており、その録音風景が紹介されています。アコースティックギター録音の参考としてメモしてみました。
<ノート>
・マイク
オンマイクとオフマイクの2本。
①オン・マイク
ネック側から斜めに音源(ギター)を狙う。
ギターとの距離:50cmぐらい。
吉川氏:ノイマン KM84
岡崎氏:AKG 414B
②オフ・マイク
音源から150-200cmぐらいか?
高さは200cmぐらいか?
マイクはどちらとも Rode NT-2。
・エフェクトは、HALL、短め および ディレイ を使用。
【録音スタジオの様子】
(2009/5/2記)
アコースティック・ギター・マガジン vol.17 (押尾コータローのアルバム録音設定等) [2:録音技術関連]
特集記事「押尾コータロー」および連載記事「銘器の音 -テイラー-」中にある録音関連の記事をメモしてみました。録音のマイク設定およびマイキングの基本に関する項目がメインです。
<ノート>
●押尾コータローのCD「Dramatic」の録音について(片石喜之氏)
・マイク
基本的にオン・マイク2本とオフ・マイク2本にラインの音を混ぜてバランスをとる。
・オン・マイク
①サウンド・ホール寄り:サンケン CU-41(1、2弦のメロディーを録る)
②ボディの下方:ショップス BLM3(バウンダリーマイク:板に貼って使用)
・・・ボディの下方は、ボディの中で一番倍音がたまっているところなので、これを狙う。音のふくよかさを出したいときにこのマイクの音を足していく。
・オフ・マイク
ノイマン M-149×2本
・ライン
①ピエゾ:ボディ・ヒットの音をダイレクトに拾う。6弦を弾きながらボディも同時に叩く奏法(パーム・ウィズ・ネイルアタック)は、ピエゾの音を足すと迫力が出る。
②マグネット:完全にタッピングだけでメロディーを弾くようなフレーズの時に足す。マグネットからの出力を足さないと、メロディーが立ってこない。
サンケン CU-41
http://www.sanken-mic.com/product/product.cfm/3.5000700
ショップス BLM3
http://www.schoeps.de/E-2004/boundary-layer.html#blm03c
ノイマン M-149
http://www.neumann.com/?lang=en&id=current_microphones&cid=m149_description
◎銘器の音 ~テイラー~ より
・マイクの設定
オンマイク AT4060
オフマイク AT4060
アンビエントマイク AT4050
・マイクの音の混合割合
オンマイク=100%
オフマイク=70%
アンビエントマイク=50%
●マイキングの基本
・基準点
サウンドホールの中心をプレイするのに邪魔にならない距離・・・げんこつ一個分と少し・・・から狙う。ここを基準に下記①~③の方向にマイクを動かしてアレンジを考える。
①横方向:
A.マイクを基準点からネック寄りに平行移動
例:ストロークで5~6弦のパワーが立ちすぎてしまう時やアルペジオでメロディー・ラインとなる1~3弦が聴きにくい時。
B.マイクを基準点からブリッジ方向に平行移動
例:音に暖かみが欲しい場合。
②縦方向:
マイクを1弦~6弦側に移動する。
③マイクの角度:
マイクの角度を変える。
※マイクを移動する際は、いったん大きく動かして音がどう変化するかを十分に理解し、その後動かし過ぎたと感じた場合は基準の位置に戻していくようにすると、移動による効果を把握しやすい。
アコースティック・ギター・マガジン VOLUME17―季刊 (17) (リットーミュージック・ムック)
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2003/07
- メディア: ムック
アコースティック・ギター・マガジン vol.19 [2:録音技術関連]
連載記事「銘器の音 -コリングス-」中にある録音関連の記事をメモしてみました。
録音のマイク設定および録音音源に対するイコライジングに関する項目が参考になります。
<ノート>
・ギターの録音設定
A.オン・マイク(AT4060)
サウンドホールからの距離=83cm
地上高=20cm
B.オフ・マイク(AT4060)
サウンドホールからの距離=93cm
地上高=65cm
C.アンビエント・マイク×2本(AT4050)
サウンドホールからの距離=280cm
地上高=130cm マイク間の距離=130cm
・ミックス・ダウン時の各パートの混合割合
オン・マイク:100%
オフ・マイク:50%
アンビエント:30%
・エフェクト
コンプレッサを少し。
●EQ(イコライジング)とリバーブ処理について(町山俊宏氏)
アコースティックギターに限らず、生の音で一番大事なのは「倍音」。
・EQのポイント
①低域
ローをカットするか、聴きやすいところを伸ばすか判断する。まずは100Hzより少し下をカットしてみて、それで音がクリアになるかどうかをチェックする。
②高域
CDやテープに落としていく段階で上の方の倍音がどんどん消えてしまうので、それを見越してあらかじめ高域のきらびやかなところ・・・8kHzから上のところ・・・を気持ち伸ばす。アコースティックギターでは2~4kHzの間にアタックの感じが表れる帯域があるので、そこも少し伸ばしてあげる。
・その他
まず8kHzから上をほんの少し上げて、それで音が成立してしまえばあとはローをカットするだけのことが多い。
響きやアタック感のあるなし、パワー感のあるなし、というのは本来はマイキングで制御すべきこと。
EQというのは基本的には使わないで済めばベスト。使ったとしても、本当にわずかな補正程度にとどめられれば、それに越したことはない。
(2009/5/2記)
アコースティック・ギター・マガジン 19 リットーミュージックMOOK
- 作者:
- 出版社/メーカー: エス・アンド・エイチ
- 発売日: 2004/01
- メディア: ムック
プロが答えるサウンド&レコーディングQ&A百問百答 [2:録音技術関連]
「サウンド&レコーディング・マガジン」に読者から寄せられた質問と回答を一冊にまとめた本。
自分はレコーディング機器をたくさん持っているわけではないので、録音関連の機器に関してはすぐに役立つと思える記事は少ないのですが、レコーディング用語で疑問に思った言葉がたくさん解説されており、録音に関する辞書代わりに使っています。
まじめな回答の合間に挿入されているヤマダリツコのイラストが笑えます。
プロが答えるサウンド&レコーディングQ&A百問百答 (リットーミュージック・ムック)
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2001/06
- メディア: 単行本
最新版は構成が少し変更されて「プロが答えるサウンド&レコーディングQ&A百問百答+20」となっています。
プロが答えるサウンド&レコーディングQ&A百問百答+20 (リットーミュージック・ムック―サウンド&レコーディング・マガジン)
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
ギター・レコーディング・ハンドブック ― ワンランク上のギター録音テクニック集 (リットーミュージック・ムック) [2:録音技術関連]
アコースティック・ギターやエレクトリック・ギターの録音にテーマを絞って解説した本。
本の企画コンセプトがよく練られており、調べたいことがすぐ探し出せるようになっています。ギターの録音を考えているのであれば、手元に置いておきたい一冊です。
録音のプロセスに関してはあっさりとしか解説されていないので、実際の録音現場についてもっと詳しい解説を読みたいのであれば「エンジニア直伝!レコーディング・テクニック大全」をチェックしてみてはいかがでしょうか。
ギター・レコーディング・ハンドブック―ワンランク上のギター録音テクニック集 (リットーミュージック・ムック)
- 作者: 中村 文俊
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
エンジニア直伝! レコーディング・テクニック大全 リットーミュージック・ムック ― サウンド&レコーディング・マガジン [2:録音技術関連]
エレキギター、アコースティックギター、ドラム、ボーカルの録音方法について、CDによるサンプル音源や写真を交えた詳細な解説を交えながら詳しく紹介した本。
いわゆるノウハウの解説本とは異なり、レコーディングの現場の雰囲気が伝わってくる紙面構成が新鮮。
これまでギターの録音のプロセスがいまいちピンと来なかったのですが、この本に出会ってからやっと具体的なイメージがつかめたように思えます。
付録CDにより録音条件を変えた時の音の変化を実際に確認できる点もいいところ。楽器の録音を考えているのであれば、チェックしておきたい一冊。読み物としても楽しめます。
自分の場合、特にアコースティック・ギターを録音する際のマイクの位置を決める際に、とても参考になりました。
ギターの録音を考えているのであれば、ぜひチェックしておきたい一冊です。
録音関連の内容が盛りだくさんで、<ノート>に書ききれないので、<ノート>を省略させていただきました。
エンジニア直伝!レコーディング・テクニック大全 (リットーミュージック・ムック―サウンド&レコーディング・マガジン)
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2003/06
- メディア: 大型本
<キムラ式>音の作り方 木村哲人著 [2:録音技術関連]
「音を作る」の続編。録音に関するヒントがちりばめられていて、参考になります。
「音作りのコツは、音でイメージをつくるのではなく、逆にイメージをまず考え、それに音をつける」という著者の思想は、自分がこれまで持っていた音作りに対する発想を大きく転換するきっかけになりました。
<ノート>
・人間の耳の性質
人間の耳は聞きたいと思う音を選んで聴ける便利な性質がある。ということは、聴きたくない音は聞こえない。録音には不要な音をカットし、必要な音をマイクに入れる技術が大事。
・無音耳鳴り
人は無響室に入ると聴覚が不安に耐えられず、耳の奥で雑音を作り出す。これを「無音耳鳴り」という。
・音作りの心構え
映像の音作りにおいて最初に考えるのは、この音は主観か客観か、ということ。画面との整合性が大事。客観の音とは、カメラから前方を見たときの音。
・部分と全体
部分と全体を見極め、どこが必要か判断できないと「音屋」はつとまらない。
・テスト・アンド・トライ
音響効果の言葉に「音は試して聞け」というのがある。ハリウッドでは「テスト・アンド・トライ」と言う。実際の録音を聞いたうえで、それを訂正する。これを繰り返して希望する音に近づくことを指す。
・音作りのコツ
音作りのコツは、音でイメージをつくるのではなく、逆にイメージをまず考え、それに音をつける。
・音のテーマ
音の最終仕上げの時に迷いが出るが、その判断はテーマを理解しているかどうかで決まる。
・画面と音
画面がズームアップしたときはおとも変化しないと、ズームの印象が半減する。遠くの音は小さく、近くの音は大きくする。
・オフピクチャー
オフピクチャー(画面に表れていないもの)の音をいかに作りこむか、が効果音の面白さである。
・破壊音
破壊音に迫力をつけるには、音の長さを延ばすのがコツ。ハリウッドはこれがうまい。
・堅さの東宝、甘さの松竹
東宝はトーキーの初期から録音技術の優秀さを誇って「東宝トーン」と呼ばれるメリハリの良い音で知られる。映画の音質を評して、「堅さの東宝、甘さの松竹」と言われる。しかし、黒澤作品だけはひどく音が悪い。
・録音が難しい音
鈴虫とバイオリンの音が最も繊細で録音が困難。
・蚊の羽音の作り方
蚊の羽音は、オーディオ・オッシレーター(低周波信号発振機)で400Hzの純音を出し、エフェクターをかけて音をゆらす。プーンと高い蚊の音なら700Hzぐらい。
・初期のラジオドラマの音
ラジオドラマの初期は「ラジオドラマの音響はいかにあるべきか」といった観念的な思考に入り込んで、技術の開拓を最初から捨てていた。
・カーボンマイク開発
カーボンマイクの研究はアメリカとヨーロッパが競い合った。日本ではザラメを炭化した材料を使って成功した。
・テープ録音
テープ録音機の登場で、映画録音の技術が一変した。
(2009/3/18記)
音を作る 木村哲人著 [2:録音技術関連]
テレビの音響マン(効果音担当)だった著者による、音の作りかたについていろいろな角度から綴った本。
趣味で自分の弾くギターの音を録音していて、録音の勘所が分からずにに苦労した経験があるため、「なるほど!」と感じる項目が多々ありました。ギター録音のような上品な録音の雰囲気しか知らなかったので、マイクで物を潰しながら録音するといったような過激な録音方法に驚きました!
この本では「音作りにおける勘所」をを中心にチェックしてみました。
・
【ノート】
・
・効果マンの待遇
映画、放送の世界では音響を担当する「効果マン」はかつていわれのない差別を受けた。著者は名人芸の効果マンが次々と廃業するのにたまりかねて音作りを習うことにした。著者の本業はミキサーである。
・音作りの基本
現実の音はそのまま録音するとリアリティーがない。スタジオで作りこんだ音の方が本物に聞こえるからおもしろい。
・ハリウッドからやってきたリックに教わったこと
映画の音には「アクセント」が必要である。馬のヒズメでも一つは弱く、二つは強く、というふうに音の強弱で演出することが大事。
日本のテクニックではこのアクセントがなく、代わりに音の終わりに神経を使う作り方である。
・水の音の録音
水の流れの音は、音質を調整すると大幅に音が変わる。低音をカットすれば早い瀬音に、高音をカットすればゆったりした流れになる。良い音をとるためには、水面すれすれにマイクを近づけて録音する。(→マイクの近接効果)
・マイクの近接効果
マイクの近接効果とは、音源の対象に近いほど低音が増強される現象のこと。
【究極の近接効果】
・風の音の録音
「風の音は録音できない」とあきらめていたが、風が一年中吹きまくっている砂漠では風音がはっきり録音できることを知った。砂の粒子が空中でぶつかりあって音をたてるらしい。
・映画「七人の侍」
「七人の侍」では、効果マンの三縄一郎氏が録音技師を指揮した。地面に水をまいてドロドロにした中、マイクを横一列に並べ、十数頭の馬が駆け抜ける音を録った。
・アメリカ映画の音がよい理由
アメリカ映画の音が良い理由は、映画全体の母体が音響メーカーであるため。(WE、RCAなど)
・シネ・モービル
シネ・モービルは機材の小型化から生まれた。以下の機材が小型化に貢献している。
- 小型ズームレンズとクオーツモーター。
- 高感度フィルム(富士フィルムが開発)
- 周囲の雑音をカットするガン・マイク。
- 超小型ピン・マイク(ソニーが開発)
- 超小型映画用録音機(スイスのナグラ・クデルスキイ)
・ゴジラの鳴き声
ゴジラの音の担当は、三縄一郎氏(東宝)コンドラバスに動物の声を重ねて合成した。
・インタビューでのマイクの位置
録音技師はインタビューの際にマイクの位置に「命をかけて」いる。マイクの性質に合わせて位置と角度を決める。
・マイクの生産国
日本は世界一のマイク生産国で、全世界の80%を作っている。プロ用、特に音楽用は西ドイツやオーストリアにかなわない。これらの高級マイクは職人の手作りである。
・恐竜の声をつくる
聞いたこともない恐竜の声を作るも効果マンの仕事。種々の音源をそのまま重ねて使うのではなく、録音テープの回転を速くしたり遅くしたりして音を作り上げる。
恐竜の鳴き声づくりでは、犬、ゴリラ、像の三つをまとめて一つの鳴き声に仕上げた。この場合、ただ重ねるだけではダメで、少しずつズラして音を組み合わせるのがコツ。
ゴリラの「グアッ」という部分を最初に、犬の「ギャオーン」という音を0.3秒ほど後にする。中ごろから最後の部分に像の「グオー」という声を混合する。こうして重ねた音に反響をつけ、低音を強調すると恐竜の声になる。
(2009/3/18記)