SSブログ

<キムラ式>音の作り方 木村哲人著  [2:録音技術関連]

「音を作る」の続編。録音に関するヒントがちりばめられていて、参考になります。

「音作りのコツは、音でイメージをつくるのではなく、逆にイメージをまず考え、それに音をつける」という著者の思想は、自分がこれまで持っていた音作りに対する発想を大きく転換するきっかけになりました。



<ノート>

・人間の耳の性質
人間の耳は聞きたいと思う音を選んで聴ける便利な性質がある。ということは、聴きたくない音は聞こえない。録音には不要な音をカットし、必要な音をマイクに入れる技術が大事。


・無音耳鳴り
人は無響室に入ると聴覚が不安に耐えられず、耳の奥で雑音を作り出す。これを「無音耳鳴り」という。


・音作りの心構え
映像の音作りにおいて最初に考えるのは、この音は主観か客観か、ということ。画面との整合性が大事。客観の音とは、カメラから前方を見たときの音。


・部分と全体
部分と全体を見極め、どこが必要か判断できないと「音屋」はつとまらない。


・テスト・アンド・トライ
音響効果の言葉に「音は試して聞け」というのがある。ハリウッドでは「テスト・アンド・トライ」と言う。実際の録音を聞いたうえで、それを訂正する。これを繰り返して希望する音に近づくことを指す。


・音作りのコツ
音作りのコツは、音でイメージをつくるのではなく、逆にイメージをまず考え、それに音をつける。


・音のテーマ
音の最終仕上げの時に迷いが出るが、その判断はテーマを理解しているかどうかで決まる。


・画面と音
画面がズームアップしたときはおとも変化しないと、ズームの印象が半減する。遠くの音は小さく、近くの音は大きくする。


・オフピクチャー
オフピクチャー(画面に表れていないもの)の音をいかに作りこむか、が効果音の面白さである。


・破壊音
破壊音に迫力をつけるには、音の長さを延ばすのがコツ。ハリウッドはこれがうまい。


・堅さの東宝、甘さの松竹
東宝はトーキーの初期から録音技術の優秀さを誇って「東宝トーン」と呼ばれるメリハリの良い音で知られる。映画の音質を評して、「堅さの東宝、甘さの松竹」と言われる。しかし、黒澤作品だけはひどく音が悪い。


・録音が難しい音
鈴虫とバイオリンの音が最も繊細で録音が困難。


・蚊の羽音の作り方
蚊の羽音は、オーディオ・オッシレーター(低周波信号発振機)で400Hzの純音を出し、エフェクターをかけて音をゆらす。プーンと高い蚊の音なら700Hzぐらい。


・初期のラジオドラマの音
ラジオドラマの初期は「ラジオドラマの音響はいかにあるべきか」といった観念的な思考に入り込んで、技術の開拓を最初から捨てていた。


・カーボンマイク開発
カーボンマイクの研究はアメリカとヨーロッパが競い合った。日本ではザラメを炭化した材料を使って成功した。


・テープ録音
テープ録音機の登場で、映画録音の技術が一変した。


(2009/3/18記)


 

「キムラ式」音の作り方

「キムラ式」音の作り方

  • 作者: 木村 哲人
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本