子どもを伸ばす コーチング・ピアノレッスン vol.1 青木理恵著 [1:演奏技術およびギター関連]
わたしは残念ながらピアノのレッスンを受けたことがありませんが、ピアノのレッスンというのは厳しい先生に指図されながら課題をこなしていく・・・というイメージがあります。ソロ・ギターを独学でやりたいと思った理由のひとつは、他人に指図されることなくマイペースで覚えられるからです。
この「コーチング・ピアノレッスン」は、ピアノの先生向けに書かれたコーチングの指導書。コーチングとは「相手の自発的な行動を促進するためのコミュニケーション技術」と著者は定義しています。
生徒や親との密なコミュニケーションをベースにして、生徒が自発的に練習を進められるよう積極的に見守るのが指導者の役割、という考え方が、豊富な具体例やシチュエーションの紹介とともに詳しく説明されており、ピアノレッスンのみならず我が家の子育てにも応用できる普遍的な技法であると感じました。
「アドラー心理学」や「マズローの欲求の5段階」といった心理学に関する項目もコラムで紹介されていますが、専門書にありがちな心理学的解説を最小限にとどめ、著者が経験したレッスンの事例を通じてコーチングのポイントが理解できます。
この本で興味深いと思った点は、「自分の優位感覚を知り、それをレッスンに活かす」という考え方。優位感覚を知ることで、学習や行動パターンの癖を理解し、先生と生徒の信頼関係をより深めることができます。
優位感覚は次の4つに分けられます。
① 目をよく使う人 Visual Style(ヴィジュアル・スタイル)
② 耳をよく使う人 Auditory Style(オーディトリー・スタイル)
③ 言語で考える人 Auditory Digital Style(オーディトリー・デジタル・スタイル)
④ 体で感じる人 Kinesthetic Style(キネステティック・スタイル)
...わたしの場合は、②と④のタイプでした。特に④の傾向が強いようです。「(装置の操作は)説明書を読むより直感でやってみたいタイプ」「指使いは番号を見るよりも何度も弾いて覚える」といった項目が自分の傾向と一致していると感じました。
独学の練習に行き詰っていてなかなか上達しない、という方には解決方法を考えるうえでおすすめの本です。
子どもを伸ばす コーチング・ピアノレッスン Vol.1 コーチングスキル編 青木理恵
- 作者: 青木 理恵
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: 単行本
齋藤秀雄 講義録 斎藤 秀雄 (著) 小澤 征爾、 堤 剛、 前橋 汀子、 安田 謙一郎、 山崎 伸子 (編集) [1:演奏技術およびギター関連]
おざわせいじ 小澤征爾
「サイトウ・キネン・フェスティバル」で有名なチェリスト・指揮者による講義の録音テープを書き起こしたもの。
「クラッシックの曲をどういうイメージでとらえ、どのような考えを持って音を出していくのか」というテーマについて、絵画や料理などのたとえをふんだんに用いて解説されており、とてもインパクトのある内容でした。
曲の解説で具体的な一節を例示して説明しているところは楽譜が掲載されています。自分の知識不足で楽譜が読めず、ニュアンスが理解できないのが残念・・・と思っていましたが、YouTubeで検索すると簡単に曲を見つけられることに気づき、動画を再生しながら音と楽譜を見比べつつ解説を読むと、齋藤先生の言いたかったことがよく分かりました。
芸術とは何か、音をどう出すか、といった「音楽」に対する根本的な姿勢について学ぶところが多く、ソロ・ギターのメロディーや和音の弾き方を考えるうえで役に立つヒントがたくさんありました。おすすめの一冊。
<ノート>
・芸術とは?
芸術とは、「一つの素材でもって全然違うものを作り上げる」ということ。その素材はあるべく簡単な方がよろしい。なるべく単純なもので、全然素材と違うものを作り上げる。音楽会へ行って、音を聴いたときにその音を意識できるんだったら、それはまだ芸術品じゃない。
私はヴァイオリンを弾くけれど、ヴァイオリンという道具を使って音楽を、違うものを聴かせよう、聴衆に何か印象を与えよう、と思った時に、そこに芸術が生まれてくるのではないかと思うんです。
・日本人の好み
心に触れるものを日本人は好む。
心に何か触れ合うものがあると、「あれはいいな」と思う。
・音楽と絵、言語
音楽というのは、絵と非常に似ているところがある。絵には「構図」「色彩」「人物の表情」などがある。音楽にはさらに「言語」の要素が入ってくる。
・器楽と声楽
昔は器楽と声楽が完全に分離していた。シューベルトが初めて声楽を器楽に取り入れた。
人間の言葉と声楽というもの、言語というものが音楽に入って初めて人間の心を音に表すのが簡単になってきた。そうしてロマン派がどんどん発達してきた。
・人間のことば
言葉は分からなくても、外国人がどういう感情を持って話をしているのかは分かる。音楽は言葉の代わりに「ニュアンス」で感情を表す。
・「比較」と「対照」
音楽には常に「比較」がある。例えば、
「大きい-小さい」
「軽い-重い」
「悲しい-うれしい」
「遠い-近い」
「硬い-柔らかい」
「問い-答え」
...など。
人間の言葉にも「比較」と「対照」がある。いろいろなメロディーを調べると、必ず具体的なことを言って、その次に感情的なことを言っている。こじつけでもいいからそういうふうに演奏すると、みんな「分かった、分かりやすい」と言う。
・フォイアマン先生の教え
先生は「バッハを弾くためには考えなきゃいけない」ってこと、「自分で解釈を付けないといけない」ということを教えてくれた。考えるヒントを先生から教わったら、後は自分で考える。
・「自由」
人類の自由というのは、規則を守ることによって生じる。音楽においては、「すべての人がそう感じるであろう」という必然性を守ったうえであれば、自由に弾くことが許される。
・構 図
「対照」となるものを組み合わせて、音楽の構図をつくる。
・感 情
尻尾(フレーズの終わり)では感情を表す。
言葉のあとに感情が来る。
・無機的→有機的
フレーズの展開のイメージ。無機的な演奏(状態を説明)→有機的な演奏(どう感じるかをしゃべる。感情を表現。)の流れ。
・起承転結
曲全体を通して、起承転結の「転」がないと面白みがなくなる。曲の中で突然変化を起こす方が人間の欲望に合致する。
・人が感じる曲の速さ
イン・テンポで演奏していても、曲を聴いて「ここでは速くなる」という気持ちが聴衆の方に湧いているのに、それ以上に曲が速くならないと、聴衆にはのろくなって聴こえてしまう。
・メトロノームを使った練習
テンポの崩れる生徒には「メトロノームを使え!」と言う。メトロノームを使ってある点まで行ったならば、「メトロノームから離れろ」「離れて自由に弾け」と言う。永久にメトロノームに合わせたテンポで演奏していると、機械的な演奏になって人間性が出なくなってしまう。
・力を抜くには時間がかかる
人間の筋肉は、力を入れるのは一瞬でできるが、力を抜くのは時間がかかる。演奏の強弱においては、急にフォルテにすることは生理的に可能だが、急にピアノにすることは生理的に不可能。
・大脳と小脳
小脳的な練習:指の機械的運動のトレーニング。
大脳的な練習:音楽的に弾くためのトレーニング。
・基礎が大事
基礎教育が悪いと、あとでいくら頑張ってもだめ。
基礎を知っていると、練習をしていてある出来ないところへ行った時に「なぜ出来ないんだろう」と考える。どこか基礎に軟弱なところがあるからできないのである。
キーワード:齋藤秀雄 斎藤秀雄 斉藤秀雄 齊藤秀雄 さいとうひでお 桐朋
(2009/6/2記)
熱血!アコギ塾 フィンガーピッキング編 (2007年) [1:演奏技術およびギター関連]
アコースティックギターのフィンガーピッキングに関する演奏講座を中心に構成されたムック。
ちょうどわたしがアレックス・デ・グラッシの「Turning: Turning Back」の練習を始めた頃に出版され、彼のインタビューとギター演奏レクチャーが載っていたので購入しました。
イントロには、トミー・エマニュエルの来日ライブレポートや、彼へのインタビューを元に構成したハイ・テクニカル・ギター講座があるので、トミーファンのソロ・ギター弾きには必携の内容。
他の特集記事として、「打田十紀夫のフィンガー・スタイル・ブルースギター講座」「Masa Sumideのリズム&グルーブ・ギター講座」もあります。
KW:Tommy Emmanuel、奏法、練習、ピッキング、サムピック、ギャロップ奏法、ギャロッピング奏法、ハーモニックス奏法
(2009/5/30記)
熱血!アコギ塾 フィンガー・ピッキング編 (シンコー・ミュージックMOOK)
- 作者:
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック
- 発売日: 2007/10/24
- メディア: ムック
【ご参考】
Alex de Grassi の「ターニング:ターニング・バック」を練習するために、こちらの楽譜とDVDを購入しました。
楽譜:Best of Alex De Grassi (Guitar Recorded Versions)
Best of Alex De Grassi (Guitar Recorded Versions)
- 作者:
- 出版社/メーカー: Hal Leonard Corp
- 発売日: 2007/01
- メディア: ペーパーバック
DVD:Alex Degrassi in Concert [DVD] (2007)
Alex Degrassi in Concert [DVD] [Import]
- 出版社/メーカー: Mel Bay
- メディア: DVD
マーティンD-28という伝説 ヴィンテージ・ギター編集部 [1:演奏技術およびギター関連]
ドレットノートボディを持つマーティン社を代表するギター“D-28”に焦点を当てて特集したムックの文庫版。
巻頭にあるギターの仕様変遷に関する年史の細かさに圧倒されました。これぞマニアの真骨頂!という感じです。
また巻末にはシーガル弦楽器工房の塩崎雅亮氏による木材の構造と音響についての解説があり、ギター製作者が木材やギターの設計に対してどういう観点をもっているのか、がうかがえて興味深い内容です。この部分だけでもこの本を買った価値がある、と思いました。
アコースティック・ギターのファンであれば買いの一冊。
<ノート>
・トップ材
マーティンD-35は追柾目が多く、D-28は柾目が多い。表板は最近のものは厚くなってきている。スプルースの堅さを10段階に分け、数字の大きい方が堅い木だとした場合、D-28の音は5から10あたりの広い範囲で出せるが、D-45の音は7から8くらいの堅さでないと作りにくいと推測している。
(2009/5/19記)
一生モノのアコギを探す - こだわりの店主がいる全国アコギ専門ショップ紀行 リットーミュージック・ムック [1:演奏技術およびギター関連]
副題の「こだわりの店主がいる全国アコギ専門ショップ紀行」の通り、日本全国のアコースティック・ギターショップをまわって丁寧にインタビューした熱意が伝わってくる本です。
店内在庫のギターも写真とコメント入りで紹介されているので、読んでいるだけでギターショップめぐりをしている気分を味わえます。
仕事で地方出張する機会がありますので、空き時間ができたときにはこの本に載っていたショップに立ち寄ったことが何度かあります。
自分がお世話になっている茨城県高萩市のギターショップ「ウッドスピリッツ」が取材されているのもうれしいところ。
定番のマーチン・ギブソンだけでなく、個人製作家によるマイナーなギターがたくさん解説されているので、ギターマニアには必携の一冊。
(2009/5/18記)
一生モノのアコギを探す―こだわりの店主がいる全国アコギ専門ショップ紀行 (リットーミュージック・ムック (第85号))
- 作者:
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2005/02
- メディア: 大型本
The Luthier's Handbook: A Guide to Building Great Tone in Acoustic Stringed Instruments Roger H. Siminoff 著 [1:演奏技術およびギター関連]
アメリカで出版されているギターの構造および製作に関するガイドブック。
当然ながら中身はすべて英語です。とはいえ小説とは違って技術英語ですし、ギターに関する基礎知識を自分は持っているので、いったん基本的な単語を覚えてしまえば、それほど苦労することなく読めました。
副題は「A guide to building great tone in acoustic standard instruments」となっていますので、この本を読めば素晴らしいトーンを得るためのノウハウがみつかりそうですが、実際にはギター製作工程において必要な工程、部品、構造が音に及ぼす影響を解説したもの、という印象を受けました。
日本語の類書がありませんので、ギターについてより突っ込んだ知識を持っておきたいという方におすすめです。
(2009/5/18記)
The Luthier's Handbook: A Guide to Building Great Tone in Acoustic Stringed Instruments
- 作者: Roger H. Siminoff
- 出版社/メーカー: Hal Leonard Corp
- 発売日: 2002/02
- メディア: ペーパーバック
YAMAHA(ヤマハ)におけるアコースティック・ギターの開発 [1:演奏技術およびギター関連]
YAMAHA(ヤマハ)は長年にわたってアコースティックギターを製造しているメーカー。わたしが最初に手にしたフォーク・ギターも、親戚から譲っていただいたヤマハのFG-300Mでした。
ヤマハのアコースティック・ギターを特集したムックは手元に2冊あります。これらの本では、アコースティック・ギターの開発当初にどのように設計を行なったのか、開発者の植田氏へのインタビューが掲載されていますので、チェックしてみました。
<ノート>
・実験計画法を用いたギターの開発
初期の開発メンバーは木本氏、玉有氏といったピアノの開発を経験したメンバーを含めて4名。フォークギターの開発依頼はアメリカから要望があった。まず構造の一部を変更したクラッシックギターを32本試作し、「実験計画法」に基づき、「分散分析計算」によりギターの部材構造が音色に及ぼす影響を調べた。
『何もかもゼロのレベルだったので、音としてどの要因が重要なのかを全部出して、いろいろな要素を組み合わせて1本1本違うギターを作った。』
続いてMartinのドレッドノートとオーディトリアムのギターを入手し、再び「実験計画法」による試作を繰り返した。
・ギターの耐久性テスト
①熱テスト 高温側は+50℃、低温側は-20℃で保持。
②耐候テスト 湿度95%と35%の室にギターを入れて動きを調べる。
アメリカやカナダに出荷する場合、乾いている地域なので湿度30%以下の部屋に一週間ほど入れて、きっちり慣らした状態で出荷した。
<参考>
・実験計画法(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9F%E9%A8%93%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%B3%95
1.ヴィンテージ・ギター (Vol.6) 丸ごと1冊YAMAHA FG エイムック
ヴィンテージ・ギター (Vol.6) 丸ごと1冊YAMAHA FG エイムック (506)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 〓出版社
- 発売日: 2002/03
- メディア: 楽譜
2.ジャパン・ヴィンテージ〈アコースティック〉 (Vol.1) ヤマハの環
ジャパン・ヴィンテージ〈アコースティック〉 (Vol.1) (シンコー・ミュージック・ムック)
- 作者:
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック・エンタテイメント
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 単行本
千住真理子とコンサートへ行こう 千住真理子著 [1:演奏技術およびギター関連]
バイオリニストによるクラッシック音楽、特にクラッシック・コンサートをお勧めした本。
前半はバイオリンを弾くことに関する話、後半はクラッシックの曲目解説。自分のギター演奏の参考になりそうな項目をチェックしてみました。
<ノート>
・クラッシック音楽は、究極のリラクゼーション。
・クラッシックはいかに小さい音を弾くか、を大切にする。
・「音楽は魂の会話である」
・力を抜く
剣道をする人が竹刀を振るときに力を抜いていないと力が出ないのと同じ。いかに力を抜いて力を出すか。力を抜いた時こそ、一番力が出る。
・暗譜
楽譜は映像としてとらえることで暗譜する。楽譜のキズや書きこんである注意書きがないと覚えられない。赤い色のペンで書くと、それを目印にして楽譜を思い浮かべられる。
・気持ちの切り替え
気分の切り替えは大事。ある程度疲れたと思ったら、頭をからっぽにして休む。
(2008/11/24記)
THE ACOUSTIC GUITAR vol.3-6 「アコースティック・ギターを良い音で鳴らすためのノウハウ」 [1:演奏技術およびギター関連]
「THE ACOUSTIC GUITAR」は、リットー・ミュージックから発売されていたアコースティック・ギターのムック。
vol.3以降に連載されていた「アコースティック・ギターを良い音で鳴らすためのノウハウ」は、個性的なギタリスト達の生い立ちから演奏にまつわる細かなノウハウまで綿密にインタビューされており、自分の演奏を考える上で大きなヒントになりました。
最近のギター雑誌でもこういう中身の濃い特集を期待したいところところです。
・登場ミュージシャン
- part 2(vol.4)
岡崎倫典、小倉博和、坂崎幸之助、吉川忠英
- part 3(vol.5)
内田勘太郎、坂元昭二、ゴンザレス三上、チチ松村
- part 4(vol.6)
有田純弘、笛吹利明、斎藤誠、中野督夫
vol.4~vol.6に登場したギタリストの方々のコメントから「弦」「ピック」「カポ」「右手の爪」「ギターの保管」に関するトピックを抜き出して表にしてみました。こだわりどころがそれぞれに違っていておもしろいです。なお、このインタビューは1996年~1997年に行なわれています。
なんちゃって☆ハイテク・アコギター 野村 大輔著 [1:演奏技術およびギター関連]
押尾コータローのギター奏法を一生懸命練習していた頃に見つけて購入した本。
なにしろ、サブタイトルは「押尾コータローやマイケル・ヘッジズみたいなプレイができるようになる!」ですから、買わない理由はありません!
当時は押尾コータローの「翼 ~you are the HERO~」を練習していて、右手人差し指によるタッピングがうまく弾けなかったのですが、この本を読んでコツをつかんでから音が出るようになりました。
タッピングや弦・ボディを叩く奏法の解説が多く出ているので、これらの奏法の勘所が分からないと感じている方におすすめです。
図説 ギターの歴史 ペーター ペフゲン著 [1:演奏技術およびギター関連]
古代にさかのぼってクラッシックギターの歴史を調査した記録。
昔のギターは小ぶりで弦の数が少なかったうえ、サロン楽器であるために音量が求められていませんでした。近代になってボディが大きくなるとともに、より大きな音が出るように構造が進化したことが分かりました。ギターの演奏や楽譜の変化についても詳細に記載されています。
<ノート>
・扇状の力木の導入。
19世紀の初頭まで、ギターの表板の力木は木目に対して垂直方向だった。(この構造は表面板の振動能力を弱める。)木目に対して平行に力木を配置することで、表板がより自由に振動できるようになった。
ピアノを教えるってこと、習うってこと 樹原涼子著 [1:演奏技術およびギター関連]
ピアノ教師である著者が子どもに対するピアノ教育について技術面からメンタル面まで解説した本。
著者の経験に根ざした方法論が展開されており、独学でギターを練習している自分にとっても、練習方法を考えるうえでヒントになる項目が多いと感じました。
<ノート>
・音楽とは
音楽は「メロディー」「リズム」「ハーモニー」の組み合わせ。この3つを満たした“音楽そのもの”で音楽を伝えていく。
音楽を愛する心、美しい音を出したいという気持ちが大切。
・弾く
美意識を持って弾かないと、テンポと関係なく音を出してしまう。演奏中につっかえた技術的な原因を自分で考えて練習できるように導く。
・幼児の練習「二段階導入法」
1.第一段階
4つの柱「聴く」「歌う」「動く」「見る」をひとつずつ個別に伸ばす。3-4歳なら1~2年、5歳なら1年前後かけて習得。
よい耳:楽音を聴くことのできる耳。
- ピアノ音の減衰
- 音のしっぽの変化
- 和音の種類
- 音の上下行
よい手:ピアノ演奏に困らない程度の筋力と器用さを身につけた手。
動く:緊張と脱力の違いの体感。各指の独立。
歌心:心の動きを自然に音楽的に表せる表現力。
読譜力:音域とリズム。
2.第二段階
ピアノデビュー。楽しんでピアノを弾く力をつける。
・カウンセリング・レッスン
「自分の考え」を育てるくせをつける。どう弾きたいのか?
自分のためにピアノを弾く。各人がそれぞれの目標を持って演奏にとりくむ。
・カウンセリングレッスンの心得 10ヶ条
①生徒の問題
②美意識:どんな弾き方が美しいか、判断基準を育てる。
③作品の理解
④自分の言葉で
⑤自分の音で吟味:自分の音すべてに責任を持つ。
⑥ミスは自分で直す:能動的に!
⑦具体的にほめる
⑧無駄に弾かせない:新たに具体的な目標を持って、“その一回”に集中して弾く。
⑨試行錯誤のススメ:生徒が解釈に迷うときは、初心者には良い例、悪い例を、上級者にはいくつかの異なった解釈を弾いて選ばせる。→考え、研究する態度、探究心を育てる。
⑩表現のためのテクニック(テンポ、強弱など):表現とテクニックの関係に着目させ、生徒自身が表現にふさわしいテクニックを選べるように育てていく。
・言ってはいけない言葉
もっとやさしく
すぐ怒らない
他人と比べない
下手と言わない
・・・生徒は練習を聴いてほしい、ほめてもらいたい。
・人生の中の音楽
人生の中に音楽がある意味。“音楽”への感謝の気持ちを忘れない。音楽に向いていない人はいない。
・子どもを育てる
本当にこの子が生きたいように生きている力をつけることを願える人になろう。
親が自分の人生を大切にする。
子供のためにいろいろな機会をつくる。あとは祈る。親が自分の人生を大切にする。
(2008/9/4記)
ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集 いちむらまさき著 [1:演奏技術およびギター関連]
ギターの腕を上達させるための方法やノウハウをまとめた本。
このジャンルの本は「奏法解説」が主体になりがちですが、この本では「精神論」的なコメントが多いのが特徴です。
著者の哲学として「結局、自分が主体的に試行錯誤しないとギターは上達しない」という考え方が貫かれていて、好感が持てました。
自分のように独学で練習していると気がつかないような基本的な事柄が指摘されている点もよいと思います。
リズムに関してしつこいぐらいに強調されていたので、この本に出会って以降、これまで以上にリズムに対して注意を払うようになりました。
ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集
- 作者: いちむら まさき
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2006/05/16
- メディア: 単行本
関連書として同じ著者による「アコギ上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集」があります。アコースティック・ギターを練習しているのであれば、こちらもおすすめです。
こちらの本では「音を止めることを意識する」というヒントが一番参考になりました。
アコギ上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集
- 作者: いちむら まさき
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2007/05/25
- メディア: 単行本
どうしてもギターが上手くならない人のための本 四月朔日義明著 [1:演奏技術およびギター関連]
エレキギターとフォークギターについて、ギターを上手く弾くためのコツを解説した本。
特に正しいフォーム(構え方、左手の押さえ方、弾き方など)を知ることに重点を置いています。例えのイメージが分かりやすいので、自分のフォームを見直す参考になりました。
<ノート>
・ギターを弾く時の姿勢
自然な姿勢で。左肩が下がらないように。左腕のわきは野球のボールがはさまるぐらいに。
・押弦時の力
親指でネックを押す力と人差し指~薬指を押す力が同じになるように。
・フレット
フレットバーの近くで押さえる。
・ピック弾き
力の入れ具合は、ほうきで床を掃くときのように最低限の力で。弦の力に負けるぐらいの力でピックを持つ。初心者のうちはミディアム以下のソフトタイプのやわらかいピックがおすすめ。
・スリーフィンガーのピッキング
スリーフィンガーの場合、指の全関節を使うことでスムーズかつスピーディーなピッキングにつながる。ピッキングの時は歩いている時の足の関節の動きに似ている。指の第二関節が膝の役割。人差し指と中指の動き方は、「弦の上を2本の指で走っている感じ」
(2009/5/1記)
どうしてもギターが上手くならない人のための本 ワタヌキヨシアキ・編著
- 作者: ワタヌキ ヨシアキ
- 出版社/メーカー: 自由現代社
- 発売日: 2006/03/06
- メディア: 楽譜
ギター・マガジン アコギがうまくなる理由 ヘタな理由 田光 マコト著 [1:演奏技術およびギター関連]
アコースティック・ギターを演奏技術を高めるために、要領よく練習するための方法を集めた本。
インストロメンタルのソロ・ギター奏法に関しても章を割いて解説されています。
右手・左手とも「なぜ悪い演奏なのか」を具体的にイラストで説明し、それをふまえてうまく演奏するコツが示されているので説得力があり、ギターを手に取って練習したくなる内容だと感じました。
自分の場合は、特にソロ・ギターにおける右手のピッキングとチョーキング、ビブラート、タッピング奏法の解説が役立ちました。
理屈でものを覚えるのが得意な理系人間の性格に向いているのではないでしょうか。
(2009/5/9記)
ギター・マガジン アコギがうまくなる理由 ヘタな理由(CD付き) (リットーミュージック・ムック)
- 作者: 田光 マコト
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2008/01/17
- メディア: ムック
新・ギター秘密のテクニック 小林雄三・坂崎幸之助・中川五郎・花房孝典 共著(1986年) [1:演奏技術およびギター関連]
ギター初心者向けのギター演奏に関するレクチャーからギターに関する雑学まで、幅広くギターに関する情報を集めた本。
前半はギター演奏のノウハウ、後半はギターにまつわる情報に構成が分かれていますが、自分にとっては、後半の雑学の部分がおもしろいと感じました。出版が1986年であり、出版当時の雰囲気を感じさせるイラストや文章に時代を感じます。
自分はヤングフォーク別冊の「フォークギター教室(1979年)」を使って練習していたので、そこに使われていた小林雄三氏発案の「YUMIN譜」が出てきた時は「これ、使ったなぁ!」と思わず口走ってしましました。
【YUMIN譜の解説】
<ノート>
・ギター上達のための2条件
①よいギターを手に入れ、必ず毎日弾くこと。
②よい演奏をよく聞く。
・クラッシックギターか、フォークギターか
コードを多く使う弾き語り用には、フォークの方がよい。クラッシックとフォークの両方の分野のギターを弾いてみたい人は、マーティンの0-16NYモデルがおすすめ。
・ベースが大切
ベースはコードフォームの中で一番低い根音。ベースはサウンドの土台。
・サムピックは始めから使う
サム・ピックは最初から親指に付けて練習した方がよい。市販のものは固すぎたり先端が長すぎたりするものがほとんどなので、紙やすりで削ったりして弾きやすい厚さ・長さに整える。
・タブ譜とYUMIN譜(ユーミン譜)
YUMIN譜は弾き語り用ギター譜として、小林雄三氏が考案したもの。コードを押さえるダイヤグラムと右手の弾き方を示したYUMIN譜から構成される。
・バレーコードの攻略
左手親指の位置に注目。コードの種類によって、ネック裏の親指の位置が変わってくる。
・弾き語りのコツ
まずやさしい曲をきっちり覚えて自信をつけることが大切。それからだんだん難しい曲へシフトしていく。
・クリシェ
同じコードが続く時、そのコードの中の音をひとつだけ変化させて色をつけるアレンジのこと。(例:ビートルズの「ミッシェル」)
・ソフィアとパブロのギター
(有)パコ・コーポレーションがプロデュースしたブランド。特にマーティンのオールドD-28のレプリカがすばらしい。(MD-2500、価格25万円)
・ニューヨークのギターショップ
西48丁目にギターショップが集まっている。マンドリン・ブラザーズ、マット・ユマノフ・ギターなど。
・名古屋
日本のギター製造は名古屋から始まった。バイオリンメーカーが作り始めたのではないか?
日本のギターの80%は名古屋で作られている。
・オベーション
カーマン・コーポレーションによるギター。ヘリコプター用のグラスファイバーを開発していたが、振動が多すぎて使い物にならなかった。これをギターに応用した。ラウンド・バックのギターは音の乱反射をなくして、締まった音質になる。
(2009/4/18記)
誰も教えてくれなかった 新・ギター秘密のテクニック―たちまちうまくなる110項目 (BMライブ・ブックス (5))
- 作者: 小林 雄二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1986/01
- メディア: 単行本
「スギ一般材からの高性能音響材料の製造」 京都府立大農学部 矢野浩之氏(1996年) [1:演奏技術およびギター関連]
ギター用の木材について、楽器用途として用いる際、どのような特性に優れているのか要因を抽出し、解析を行なった報告書。
ギターに適した材料の諸物性がまとめられており、理解しやすい内容です。
【 目 次 】
<ノート>
・楽器材料にとって重要な音響特性
①密度(比重)
密度が小さいほど振れやすく、外部振動が伝わりやすい。
②ヤング率
③比ヤング率(E/γ):ヤング率を密度で除した値。
共振周波数fr(Hz)は、比ヤング率が大きいほど高くなる。
④内部摩擦(tanδ)
tanδの小さな材料は、外から与えられたエネルギーが材料中で熱エネルギーに変換されにくいため、放射音の減衰が遅く、共振がシャープで音響変換効率に優れる。周波数帯の広い複合音では、時間の経過にともなって高周波側から早く減衰し、低周波成分が優勢な音に変化する。
⑤ E/G値
ギター表板材料は、経験的にγ、E、tanδが小さい材料ほどギターの音量が大きくなる傾向がある。
・音の三要素
①大きさ
②高さ
③音色:音を周波数解析して得られる。音響スペクトルのピーク数、周波数、強度分布および各周波数の位相関係による特徴づけられる。
例:複雑な倍音構造を示す方が“豊かな音”。
バイオリンでは、3~4kHzのレベルが高いと明るい音、低音のレベルが高いと暗い音になる。
・内部摩擦の周波数依存性
空隙率の高い低比重材では、共振周波数が低周波数側に移り、耳障りな高周波側での音響放射を抑制する。
・木の音響特性
木目に対して平行方向と垂直方向のヤング率比は10~20倍(針葉樹の場合)。広葉樹はこの値がより小さくなる。
木材は動的ヤング率が大きいものの、鋼やアルミにくらべて内部摩擦が大きい。木材は振れやすく振動応答は速いが、その割に振動吸収が大きい。アルミハニカム材もtanδが大きくなる。
木の細胞壁中のミクロフィブリルの配向が音響特性に影響する。フィブリル傾角が大きいと、動的ヤング率が小さく、tanδが大きい。トウヒ属はフィブリル傾角が最も小さい。→叩いた時の音が高くなるため、タッピングによる材料選別の目安となる。
木材は吸湿するとEが減少、tanδが増加する。
・ベイスギ(米杉)とトウヒの比較
米杉はトウヒよりtanδが小さい。これは心材成分(ポリフェノール系成分)の影響。マトリックス構成成分間の凝集力を高めている。ローズウッドも心材成分によりtanδが大きく減少している。
・カエデ材
カエデは放射組織によりtanδが大きい。バイオリンの裏板には好ましい材料。
・ブラジリアンローズウッドとインディアンローズウッドの比較
ブラジリアンはインディアンに比べて比重が10%ほど大きく、繊維方向のtanδが20%小さい。
・木材の化学処理
内部摩擦を低下させることを目的として、化学処理を行なった。木材細胞壁を主たる反応の場とし、木材構成成分間の凝集力を増大させる化学処理が有効である。(サリゲニン処理、ホルマール化処理)
・木材の積層化
繊維方向の比ヤング率の増大。
低密度の木材を芯材とし、高密度・高弾性の木材を表層に配置させてサンドイッチ状態にして材が有効。
・裏板木材と表板木材の違い
裏板は、表板に比べて以下の点が求められる。、
①比重が大きい。
②動的ヤング率が大きい。
③tanδは小さい。
このうち①と②は振動しにくい方向になる特性であるが、一度振動を与えられると振動エネルギーが吸収されにくい性質を持つ。
(2008/2/9記)
【この本は市販されておりません】
読めば上達!!ギタリストの盲点 津本幸司著 [1:演奏技術およびギター関連]
プロのエレキギタリストによるエッセー集。
具体的な演奏技巧に関する記述はあまり載っていません。ギター演奏に対する考え方については、気になる言葉が多いと感じました。
<ノート>
・プロとアマの違い
プロとアマの違いはビジネスの問題であって、みな音楽家としては同じ。
・練習の振り分け
課題曲中にあるリズムギターとソロギターの演奏時間の割合に合わせてリズムギターとソロギターの練習時間を振り分ける。ソロギターにばかりかかりきりにならない。
・手の大きさ
欧米人の中には手が大きすぎて小回りがきかないと嘆く人もいる。
・ストレッチ
風呂の中で指のストレッチをすることで、指をやわらかくする。
・他人の演奏に対するコメント
受け手の気持ちを考えてコメントする。言っていいことと悪いことがある。
・人前での演奏
聴衆が何を求めているか?によって、その場にふさわしい音楽が異なる。
・音を出す
気をつけるべきポイントは「押さえる」「弾く」「伸ばす」「消す」の4つ。
・オンビート
オン・ビートに解決音が来ると、演奏が幼稚に聞こえる。
・音質を決める要素
アンプのクオリティーより技術のクオリティーの方が音質に与える影響が大きい。
・自分育成プログラム
自分がやりたいことを実現するために、自分の中のゴールを決める。ゴールから逆算して、「今」すべきことを見つける。
(2008/11/2記)
綾戸智絵ジャズレッスン ― 課外授業ようこそ先輩・別冊 [1:演奏技術およびギター関連]
NHK番組「課外授業ようこそ先輩」の番組内容をそのまま一冊の本にまとめたもの。
小学校六年生に対して「Let It Be」の歌を教えることを通して、音楽の楽しさを伝えています。臨場感をうまく伝えており、一気に読み通してしまいました。
<ノート>
・三声
【メロディー】+【高音部】もしくは【低音部】
・手を叩く
リズムを取るときに手を叩く場合、両手をつけるのではなく、手を離すことを考えて叩くようにする。
・だいじなこと
音楽をやりながら熱くなる過程が大事。これが起こらないと楽しいことは何も起こらない。
・アクセント
アクセントは「深く掘る」イメージで。
・リラックス
リラックスすると、音楽が体にスーッと入ってくる。
・毛穴で音を聴く
耳で音楽を聞いていると、音が首から上にしか入らない。毛穴で音楽を聴くと、五感以上のことを感じながら聞ける。「意識のない無意識」で音楽を聴いてほしい。
・父の言葉 「売れる音楽屋になれ」
『人を楽しませることが、いちばん大事なこと。でも勉強、練習はなるべく人さんの見えんところで隠れてしろ。』
(2008/10/15記)
綾戸智絵ジャズレッスン―課外授業ようこそ先輩・別冊 (別冊課外授業ようこそ先輩)
- 作者:
- 出版社/メーカー: KTC中央出版
- 発売日: 2000/10
- メディア: 単行本
ピアノを弾くということ。 - ピアニストは八百屋さん? 花岡千春著 [1:演奏技術およびギター関連]
芸大の先生による音楽論。
ピアノ演奏のテクニックではなく、演奏に対する姿勢や生き方、物の考え方などを中心に書かれています。
音楽演奏をたしなむ自分にとって考えさせられるところが多く、興味深い内容でした。
<ノート>
・演奏するときの心境
演奏するときは、謙虚な気持ちを忘れてはならない。偉大な演奏家でも謙虚な人は聞いていて楽しくなる。
・自分の音
自分の音を聴き、自分の音を作る。
・バックハウスの練習
ある音をポーンと鳴らしては考え、また鳴らしてみることで音を磨くことに専念する。
・脱力の重要性
脱力と自然さは、ピアノに限らずすべての演奏行為において必ず遵守されないといけない要素。
・よい音を作る
うまいピアノを弾く人は、音に補色のような関係を作り出す。音の対比を利用する。例:特定の音色の表出力を高めるため、それまでの音色をできるだけ同種のタッチにまとめておいて、ある部分からまったく変化させる。コントラストをつくる。
・音を切る
音を切る。今わき起こっていた音の運動を、また永遠の静寂に戻す。
・呼吸
自分の息を意識する。
・生活
自分を磨く。
礼をつくす。
志のある人生を送る。こつこつと自分なりの方法で音楽と向き合って前に進もうという心はやはり尊い。自分の中にいろいろな方法論を蓄えていく。
(2009/1/27記)
カッコよく弾く! アコースティック・ギター 谷川史郎著 [1:演奏技術およびギター関連]
アコースティック・ギターの教則本。
演奏だけでなく、ライブでのパフォーマンスに関しても細かな記述があり、参考になりました。
<ノート>
・ステージでの演奏
ステージでは客席を見て、オーディエンスに対して演奏するようこころがける。
MCはパフォーマンスの第一歩。
ステージのアクションはおおげさになるぐらいで。
・Fコードの押さえ方
Fを弾くときは、指をまっすぐにせず、ちょっと「くの字」にする感じで、指の横側が当たるようにする。
・上手(かみて)と下手(しもて)
上手(かみて)は客席からみてステージ右側、下手は逆。
(2008/11/2記)
カッコよく弾く!アコースティック・ギター (プロフェッショナル・パフォーマンス)
- 作者: 谷川 史郎
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 2001/04
- メディア: 楽譜
楽の匠 - クラシックの仕事人たち 大山真人著 [1:演奏技術およびギター関連]
「音楽の友」に連載された、クラシックの裏方達の取材をまとめたもの。
字幕制作家、コンサートドレス・コーディネータなど、音楽の舞台の裏にはたくさんの人が関わっていることがわかります。ここではギター制作家の今井氏のコメントを拾ってみました。
<ノート>
●ギター製作家 今井勇一
・中出輝明の工房出身。
・職人は「腕と根性と誇り」を持つ。
・アグアド、ラミレス、ハウザーの形をコピーしても、音に驚くほど差が出た。
・弾き手の考える音楽を実現する楽器。ギターは演奏家の道具と考える。
・いい楽器の条件は、「音量、伝達性、弾きやすさ」。それ以上の音質や音楽性は、弾く側の裁量。
・ギターはいいプレーヤーが弾くと15年から20年あたりから最高に鳴りはじめる。
(2008/9/23記)
バイオリン おもしろ雑学事典 奥田佳道著 [1:演奏技術およびギター関連]
ギターもバイオリンも同じ弦楽器なので、楽器構造と音の関係についてチェックしながら読んでみました。
バイオリンは歴史のある楽器ですので、時代の要求に合わせて音質や構造が変化していることを初めて知りました。
<ノート>
・音をずらす
音楽的効果を考えて、多少音程をずらす。
コンチェルトなどで、わざと音程をほんの少し高めにとって、オーケストラに沈んでしまわないようにする。
・バイオリンの発達
バイオリンはサロン楽器からホール楽器へ改造された。
①強い音を出すため、張力を高める設計に変更。ネックに角度がついた。
②駒が高くなった。
③バスバーが大きくなった。
④魂柱が太くなった。
⑤ピッチが高くなった。
・バロックバイオリンとモダンバイオリン
バロック・バイオリンは「語る楽器」、モダン・バイオリンは「歌う楽器」
・ニスの役割
ニスを塗ることで音の振動を際立たせる。
(2008/3/4記)
美しい演奏の科学 藤原義幸 著 [1:演奏技術およびギター関連]
ヴィオラ奏者による、オーケストラにおけるリズム表現について解説された本。
弦楽四重奏のコンサートに行った際、演奏者たちがアウフタクトでリズムを合わせるのに「スッ!」と観客席に息の音が聞こえるくらい強く呼吸したり、オーバーなアクションで体を揺らしながらお互いのリズムを合わせているのを目にして、「なぜだろう?」と感じていたのですが、この本を読んでその疑問が解けました。
ソロ・ギターの演奏ではリズムが重要ですので、自分の演奏におけるリズムの取り方を考える上でとても参考になりました。
<ノート>
・日本人のリズム感
日本の教育は、「強弱がリズム」と誤解させた。演奏における適度なリズムのずれは、むしろ快さや美しさを与える。
・自然なリズム
メトロノームに合わせて奏くことが重要なのではない。自然なリズムが大事。
・個性のある演奏
「対比効果」などを使うことで、個性のある演奏ができる。
・ホルモンの影響
女性ホルモンである「エストロゲン」が<多い男性>と<少ない女性>の音楽的感性が高い。
・あがり対策
演奏前のあがりをおさえるため、「臍下丹田(せいかたんでん)」を意識する。
・アウフタクト
アウフタクトは「準備・始まり」の第0拍。
アウフタクトは、小節の最後にある拍。(英:アップビート)楽器演奏において、発音直前の身体的な緊張の時を指す。演奏において重要な拍。
・時間と意識の関係
意識すると時間が短くなる。長く弾く意識を持つ。
・ウインナー・ワルツのリズム
「ジン・タン・タ」のように2拍目を強調するのではなく、「ジ・タッ・タ」のように1拍目を強く、2拍目を短くする。
・ヴィブラート
ヴィブラートは基音に向かって下からかける。一番高い音をメロディーと感じるため。
(2008/3/16記)
メイキング・マスター・ギター ロイ・コートナル著 (Making of Master Guitars) -ギターの名器とその制作方法詳説- [1:演奏技術およびギター関連]
有名制作家のギター作品をギターの構造面から詳しく説明している本。
オリジナルは海外の本なので、ギターの構造に関する説明はかなり細かい範囲に及んでいます。
ギターを構成している各部品が音響特性に対して担っている役割が理解できるので、「なるほど!」と感じるところが多々ありました。
<ノート>
●アントニオ・デ・トーレス(1817-1892)
クラッシックギターの構造を確立。スペイン式のネックエンド構造。
●サントス・エルナンデス(1874-1943)
・ギターのブレーシング
下部のハーモニック・バーを表面板の中央の接合箇所に対して90度にするかわりに、ブリッジ方向へ斜めに角度を変えることで、高音弦の領域で表面板の振動する範囲を狭くした。
力強い低音を得ることは比較的容易だが、高音部で同じ力強さを創り出すことは非常に難しい。
●ヘルマン・ハウザー(1882-1952)
ドイツ最高のギター制作家。
・ドーミング
ギターの表面板の上下、左右をドーム状にすることで、表面板を薄くできる。
・ギターの設計
ブリッジの中央領域の力木(の背)が非常に高い。
ブリッジの真下にスプルースの薄板を取り付けた。
→ブリッジのバランスを取り、すべての弦にわたってより良い均等な音質を得るための手段。
●エルナンデス・イ・アグアド
スプルースの表面板は薄く、軽いギター。ブレーシングは高音側を狭くして振動面積を小さくしている。
●イグナシオ・フルタ(1897-1977)
コンサートホールでも鳴る、パワーのあるギター。
・カナダ産の米杉
できたばかりの新しい楽器でもすぐに力強い音を出す傾向がある。木材間で品質がずいぶん異なるため、使いこなしが難しい。非常にもろく、木目に沿って割れやすい。高音部が不鮮明になりやすい。一方、スプルースはその潜在能力を成熟させる(=音が出るようになる)のに、十分な時間を必要とする。
●ローベル・ブーシェ
アーチを切り抜いたハーモニック・バーを使用。
表面板は薄く、一定厚み。バーや力木の寸法を調節して音色を整える方法を採用。
●ダニエル・フレドリッシュ
軽い楽器。タッチに敏感で、ヴィブラートや音色の対比をつけやすい。
●ホセ・ロマニリョス
最良のスプルースのみ表面板に使う。表面板が弦の振動に可能な限り十分に応答するように、厚さをふさわしい寸法に仕上げる。
・スペイン式とヨーロッパ式のギターの違い
スペイン式のギターは非常に軽く作られる。ヨーロッパ式の力木は、表面板を横切る形で作られるので、表面板の共鳴音が高くなる。そのため、低音が制限され、鮮やかさに欠ける音になる。扇形力木にすると共鳴音が低くなる。
・表面板の重要性
表面板がふやけていて“ガッツ”がなければ、そのギターは良くない。板の厚みはサウンドホール上とブリッジ周りで最大約2.75mm。周辺部は薄く約2.0mm。すべては扱うスプルース次第。
・ブリッジ・プレート
今後はブリッジ・プレートを使わない。木目の方向が表面板と交差しているので収縮した際にゆがみが出る。プレートは他の部分と対立関係にある。
== 一般論 ==
・材料
よく乾燥された材料を使う。木材の両端(小口面)からの極端な乾燥を抑えるため、シーラー(目止め材)を使う。
・表面板
表面板に亀裂があると、こぶしで叩いた時に鈍い「ボンボン」とした音に聞こえる。スプルースのギターは多くの場合、2~3年以上経ってから音が大きく好転する。スプルースは材のばらつきが少なく、米杉はばらつきが多い。良い米杉は暖かい音で響きわたり、良くない米杉は高音で特有の線の細い音を出す。
・接着剤
にかわや合成接着剤(タイトボンドなど)を使用する。
ローズウッドは油脂分を含むので、にかわでの接着は難しいが、合成接着剤では強い接着力を発揮する。
・音質
良い楽器は、多彩な音色を生み出すことができ、演奏家の技術にすばやく反応する。
表面板が柔らかいほど基音を出しやすい。基音は指が弦を弾く瞬間に生み出される音で、この最初の音が倍音の範囲を決定し、そして共にその楽器の音質を作り出す。ある程度木を通過する振動を抑制しないと、楽器の音は透明さに欠ける。この制御の加減で音質が決まる。
・サドルと弦
鋭角に弦をサドルに乗せることは、明瞭な音作りのために必須。
サドルの底面は水平でなければならない。
(2008/5/6記)
メイキング・マスター・ギター―ギターの名器とその製作方法詳説
- 作者: ロイ コートナル
- 出版社/メーカー: 現代ギター社
- 発売日: 2003/11/13
- メディア: 楽譜
聞いて、ヴァイオリンの詩(うた) 千住真理子著 [1:演奏技術およびギター関連]
ヴァイオリン奏者 千住真理子のエッセイ。
一度は演奏活動をあきらめながらも、ホスピスでのボランティア演奏をきっかけにして再び演奏活動するようになったエピソードが印象に残りました。また、母親と楽しくのびのびと練習していた様子から、「好きなことを夢中になって行なうことで、知らず知らずのうちに才能を伸ばす」姿勢が大切であることがうかがえます。
ヴァイオリンの音に心をこめながら真剣に演奏活動と向かい合う著者の生き方に対して、おおいに感銘を受けました。
<ノート>
・“心を入れた音” 願いをこめて練習する。
・無心になることは難しい。
・音楽は心のダンス。音楽とは“魂の会話”。
・「神は、そのことに耐えられる人にだけ、大きな試練と栄光を与える。」
・人と人との間に、ほどよい“距離感”を持つ。
・芸術探求の旅 ・・・すべての学問は、「無限性」と「不可解」にたどりつく。感性は生きる上で最も重要である。感性を養うためには、自分自身と向き合うこと、人間の理解を深めていくこと、人間社会を理解するよう努めること。
・演奏の伝達に関する実験結果
「演奏家のつくろった思い」はまったく伝わらず、「内面の本質」が聴き手の感性に触れる。
・200%の努力
どんなに苦しみが多くとも、ほんの少しの喜びと音楽を愛する熱い想いさえ持っていれば、きっとすべて乗り越えられる。
・丹田
腹にさらしを巻いて、丹田を意識する。
・耳栓を使った練習
耳栓をして難しい曲を練習すると、どんなに自分の音が聴きにくい状況でも戸惑うことなく演奏できる。
・父親の教育方針
どんな道を選んでもよい。“一流”ではなく、“超一流”でなくてはダメだ。
(2008/5/6記)
知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典 湯浅ジョウイチ 著 [1:演奏技術およびギター関連]
ギターの歴史に始まり、音楽ジャンル、アーティスト、ギターに関するトリビアまで、広範囲に渡ってまとめられた本。
かなりマニアックな領域まで突っ込んだコメントや著者の主観に基づいた意見が楽しめます。
ギター奏法およびギターの木材と音質の関係に関するコメントを拾ってみました。
<ノート>
●ギター全般
・クラッシックギターの元型を作ったのはトーレス。
・セゴビアは親に隠れてギターを練習した。(親の反対や時代の影響のため)
・ロベン・フィードと著者のQ&A
フレーズはその時に鳴っているコードを意識して弾くこと。
ブレスコントロールが重要。管楽器奏者の感覚でギターを弾く。
・リバプールサウンドは、豊かで軽やかな中高音が特徴。
・ウェス・モンゴメリーに深く傾倒すると、ノイローゼになるらしい?
・渡辺香津美の手は小さい。
●ギターの構造・音について(ヤマハ 成瀬氏)
・表板
杉系の表板は軽くて振動しやすい。スペイン的な明るい音楽に向く音色。
松系の表板は、音の線は細いものの、芯があってクリアな音色。バロックのように複数の音が様々に動くような音楽でも、ハッキリと聞こえる。
良い表板は、木目が均一で密に揃っている。木目と交差するように髄線(放射組織)が格子状にあって、かつ全面にあるもの。ベアクローも良材。
・裏板
裏板中に含まれる脂の成分は音質の一端を担っている。
・ネック
ネックはわずかな順ぞりが理想。
・経年変化
昔のギターは2~3年弾きこむと音が良くなった。初めから良い音のするギターは表板を薄くしているが、板に力がないため寿命が短くなる。
・遠鳴りとそば鳴り
遠鳴り:聞こえる音量感は決して大きくないが、遠くまで聞こえる音。特徴は音の中に少し芯のある雑音感が含まれていること。(これが遠くまで聞こえる要素)
遠鳴りの音は近くで聴くと少々嫌味が強く聞こえるが、そば鳴りはこれが弱い。
・合板と単板
異なる材を貼り合せた合板では、それぞれの個性が入り混じって単板にはない複雑なニュアンスが出る。合板も良い方向に経年変化する場合がある。ただし、経年とともに貧相な音になる場合も多い。良い音といっても、単板の音とは本質的に違う。
(2008/5/3記)
知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典 湯浅ジョウイチ 著
- 作者: 湯浅 ジョウイチ
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックメディア
- 発売日: 2007/10/25
- メディア: 単行本
ピアノ・テクニックの基本 ピーター・コラッジオ著 [1:演奏技術およびギター関連]
ピアノを表情豊かに弾くための方法論。
ソロ・ギターの演奏にも応用できる考え方が多く、非常に示唆に富んだ内容でした。演奏の方法論に関するテーマの本はピアノとバイオリンがほとんどですので、プロのギタリストの方にもぜひ取り組んでもらいたいところです。
<ノート>
・技術
目に見えないテクニックがすばらしい技術。
・美しい演奏
美しい演奏は、“聴く”ことからはじまる。1音にこめられた意味や表情を、どのような音でどのように表現するか、を考える。
・パルスを感じる
演奏中にいくつかの音を間違っても、正確なリズムをキープする方が音楽的コミュニケーションにとって重要。ゆるぎない、規則的な パルス を感じながら演奏する。
・練習について
目指す音を出すために、試行錯誤を繰り返して、不必要な緊張なしに音をコントロールできるテクニックを習得する。そのためには、意味のある練習をすることのみ。
・ピアノの性格
ピアノは打楽器的な性格を持つ。
・余韻
音をどれだけ持続させるのか、どれだけ余韻を残すのかを考えて準備する。
・音符を線で結ぶ
音符を線で結ぶことで、音がどこに向かっていくのか・・・高く上がっていくのか、あるいは低く下がっていくのか・・・を予測できる。
・メロディーのコントロール
一般的に、メロディはピッチが高くなる流れでは強く、下がっていくメロディラインでは音量が小さくなる。
・息つぎを!
自然なフレーズをつくるために、練習のときはピアノに合わせて歌うことも大事。
・メロディー
メロディーを浮き立たせるには、単純なメロディーを大きな音で弾くこと。
・深く⇔浅く
大きな音を出すときは、指が鍵盤を突き抜けるようなイメージで。伴奏を弾くときは鍵盤を浅く押さえて柔らかい音色に。
・聴く!
演奏するうえで必要なただひとつの法則は、自分の奏でるすべての音を最後まで聴いて注意を払うこと。
・ベース音
最低音であるベース音は非常に重要な音。大きく弾く。ベース以外のコード構成音は、ベース音とブレンドするように弱く弾く。
・伝えるということ
自分が音楽を通して伝えたいことを、すべての動きを使って、様々な表現方法によって伝える。
・演奏の手順
奏でようとするフレーズについて、まず頭の中で聴くことが大切。
聴く→準備する→奏でる→知覚する のサイクルを繰り返す。
・呼吸
演奏においては呼吸を整えることが大事。
・自ら発見する
作品やフレーズの持つ音楽性をより美しく表現する方法を先生が教え込むのではなく、練習者に自ら発見させることが大事。
(2008/11/24記)
音楽家になるには 中野雄著 [1:演奏技術およびギター関連]
プロの音楽家について、音楽プロデューサーの視点から書かれた本。
自分はあくまで趣味の世界で音楽を楽しんでいますが、ここのところ演奏技術が停滞気味。さらに演奏技術を向上させるためにはプロの心構えと真剣さが必要なのではないか・・・と思うところがあり、手にとってみました。
一流音楽家が日常行なっている練習や演奏に対する考え方に、大きな刺激を受けました。
「目的を持った努力」の大切さを痛感させられます。
<ノート>
・「楽譜に忠実」だと、機械的な演奏なってしまう。
・弦楽器は“自分で音をつくる楽器”。
・基礎を正しく身につけることが大事。
・よいタッチを身につける。よく自分の音を聴いて、歌う。
・音楽はあくまで聴く人の心に沁み入って、それを揺り動かすようなものでなくてはならない。
・明確な意思を持って、自分の音を表現する。
アメリカン・ルーツ・ミュージック 奥 和宏 著 [1:演奏技術およびギター関連]
アメリカ音楽とそれにまつわる楽器の歴史がまとめられています。もちろん、ギターの歴史もきっちりと調べてありました。
弦楽器の栄枯盛衰をみると、1921年まではマンドリンの生産が盛んで、その後ギターの生産が盛んになりました。
フォークギターについては、当初の指で弾くスタイルから、フラットピックでガンガン叩きつけるスタイルに変わり、用いられる弦も音量を稼ぐためにガットから鉄弦に変わり、それが現在まで続いています。
ここ最近まではドレッドノート・ボディのギターが人気でしたが、フィンガーピッキングによるソロ・ギターブームを受けていろいろなタイプのギターが出てきているので、今後はどういうギターが主流になっていくのか、楽しみなところです。