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発明戦争 エジソンv.s.ベル 木村哲人著   [4:オーディオ関連]

音響、映像、無線、ラジオの発明に関する歴史をまとめた本。

偉人伝とは異なる真実のエジソン像を描き出そうとするコンセプトは、事実の探求において技術者らしいアプローチで迫っており、好感が持てます。


・エジソンとベルの開発方法
エジソン:腕のいい技術者を集めて発明工場をつくった。特許で技術を囲い込み、ライバルと戦う。エジソンは先祖の代から反抗の人。学者へのコンプレックスから理論を侮辱するのが欠点。

グラハム・ベル:物理学者と機械技師を組み合わせて、発明を企業化した。特に真空管など電子回路の時代になると、この形態で企業が発展した。


・蓄音機
エジソンの蓄音機は円筒に直接音による振動を刻み込む形式。垂直記録の円筒式の方が、その後普及した円盤式よりも大きな音が出た。実際に聴き比べてみると、圧倒的に音質がよい。真空管による振動の増幅が可能になってから、円盤式レコードの時代になった。


・アンプ
レコードに刻まれた音を真空管で増幅するのは、針の振動を直接増幅する場合に比べて不自然であり、邪道であると考えられていた。


・コンセント
昔は電灯しか電気機器がなく、コンセントがなかった。コンセントが作られたのは、電気蓄音機(電蓄)の電源用のため。初期のコンセントは電気スタンドにつけられていた。電気ソケットからコンセントを分岐するために二股ソケットを考案したのが松下電器。


・映画
初期のサイレント映画(映像のみの映画)は、電灯、写真、化学薬品、モーターとメカニズムが結合して誕生した。トーキーはこれらに加えてさらにマイクと真空管が加わった。


・ベル研
トーキーに必要なあらゆる機材をベル研は開発した。これらの音響システムをWE(ウエスタン・エレクトリック)から発売した。最初はリスクを恐れてどの映画会社も手を出せなかった。後にトランジスタを発明したのもベル研である。


(2009/3/17記)


発明戦争―エジソンvs.ベル (ちくまプリマーブックス)

発明戦争―エジソンvs.ベル (ちくまプリマーブックス)

  • 作者: 木村 哲人
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1994/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)