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入江順一郎のオーディオ・ベーシック講座 入江順一郎著 (1988年) [4:オーディオ関連]

 

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「週刊FM」誌に連載された表題の講座を一冊にまとめたもの。

時代背景がレコード・カセットからCDに置き換わりつつある頃のものですので、いずれの音楽フォーマットについても動作原理や音に影響する因子について分かりやすく説明されています。最近はデジタル・オーディオばかりになってしまいましたので、こういった機器の作動原理の解説をみかけなくなりました。

「オーディオは感覚で覚えて欲しい思っている」と著者はあとがきで述べています。目に見えない抽象である「音」の再生・録音に関して、各機器が果たしている役割をイメージするのにこういった本が最適だと思いました。



<ノート>

・アンプ
本当のところ、アンプはない方がよいと思っている。アンプがあるからアンプの音質がどうのとか、重量がどうのとかの問題が出てくるわけで、レコードのカートリッジから直接スピーカーにつないで鳴らすことができれば最高。


・ラウドネスのスイッチ
音量が小さい時は、人間の耳の高音と低音の感度が低下するので、これらの音を強調するのが「ラウドネス」の機能。


4kHz付近の音
4kHz付近が耳の感度のよい領域。日常生活でイヤな音(キーキーする音)もこのあたりの周波数。オーディオでここの音が出っ張っていたり、粗い音になっていたりすると、やかましく感じたり、音がやせたり、高音域が伸びていないように感じることがある。


・3ウェイスピーカー(大→小へ、ウーファー、スコーカー、ツゥイーター)
スコーカーは中音域を担当し、音楽で大切なボーカルの帯域を確保するのが目的。スピーカーの振動板の材質は、なるべく統一した方が音のつながりがよくなる。(音色が統一される。)スピーカーのコーンの材料は、以前は紙だった。ウーファーはカーボン材が多い。求められる材質は、軽くて強度があり、材料中に適度な隙間があるもの(内部損失が大きくなる)。


・周波数の分配
3ウェイスピーカーへ入力する信号は、周波数帯によって分配する。そのためにはコイルとコンデンサを組み合わせて使う。コイルは高い周波数ほど通しにくく、コンデンサは逆の性質を持っている点を利用する。


・スピーカーの台
コンクリートブロックは使用してもよくない。全体に音がパサついた感じになり、低音も部分的に固まって低い方に伸びてくれない。
金属製の台:音にメリハリがついてしっかりした音になる。
木製の台:響きがよく、自然な感じ。


・スピーカーのケーブル
なるべく太いケーブルを短く使用するのが原則。


・CDのフィルター
CDでは高周波域のノイズをカットするため、ローパスフィルターが使われている。アナログ・フィルターでは20kHz以上の周波数帯に急激な減衰曲線をもたせることが難しい。急峻な減衰特性を持たせると、高音域で位相の反転(信号の進み遅れ)を生じて、音場感に影響が出る。通常はデジタルフィルタを使う。


・カセットデッキ
テープに使われている材料の磁気特性の関係で、そのまま録音すると音が歪むため、バイアスをかける。100kHz前後の周波数を使う。テープでは広域でヒス・ノイズが発生するため、録音時に高域のレベルを上げて録音し、再生の時はその分レベルを下げることでノイズを低減させる。


・テープに発生するワウ・フラッター
6Hzを境にして低い方の回転ムラをワウ、高い方をフラッターと言っていた。ワウは音がワウワウという感じ、フラッターは音が濁る。

(2009/4/9記)

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入江順一郎のオーディオベーシック講座 (オーディオ選書)

入江順一郎のオーディオベーシック講座 (オーディオ選書)

  • 作者: 入江 順一郎
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1988/10
  • メディア: 単行本