長岡鉄男のわけのわかるオーディオ 長岡鉄男著 (1999年) [4:オーディオ関連]
オーディオ評論家によるオーディオの全体感を解説した本。
機器の電気工学的な解説の定義に疑問を感じるところもありますが、「よい音を出すためにどうアプローチすればよいか」という点に関しては、著者の試行錯誤の跡が文章の背後からにじみでていて、参考になりました。
音を聴くことに対し、 ソフトウェア~ハードウェア~発音~聴覚能力 の各因子についてトータルにレベルアップしていくという基本概念を持っていることがうかがえます。
文中で「オーディオで最も大事なのは音波(音楽信号)から(スピーカーによる)音までの伝達・分析機能の正常化と以上信号の排除だが、これが理解されておらず、音波だけに全力投球するマニアが多い」と苦言を呈しています。
<ノート>
・音量
オーディオ好きな人々は、小音量派から大音量派までさまざま。演奏家は概して大音量派である。
・良い音と悪い音とは
良い音も悪い音もない。あるのは感覚的にいえば「好きな音」と「嫌いな音」。物理的にいえばソフトに忠実な音(ハイファイ)と忠実でない音(ローファイ:欠落や付加のある音)に分けられる。
・耳の能力
耳の能力の差は想像以上に大きいものであり、オーディオで最も大切なのは、自分の耳の特徴(感度、f特、許容能力、そして好み)を確認すること。
・スピーカーの低音域発生能力
スピーカーでは低音になるほど音の空振りが多くなる(=伝達効率が悪い)
・エージング
反りのある合板を使ってスピーカーを作ると、内部応力で突っ張っている。この状態のキャビネットは叩くと敏感に反応して、ボンボンとかビンビンとか鳴りやすい。このような残留応力はエージングで解消する。
・機器の筐体(きょうたい)構造と音の関係
アナログ・ディスク、CDとも共通するのだが、繊細な高域は回路の工夫や高品位のパーツの採用で達成できるが、ローエンドの重量感、瞬発力といったものは電源、キャビネットの強度といったもので左右されるようだ。
・ケーブル
ケーブルで音が良くなるか悪くなるかは分からない。ケーブルの接触によっては、音が変化する。ラインケーブルにはまだ分からない部分が残っているようで、オカルトの世界に近い。一番大事なのは理解して使うことではなく、信じて使うことだと言われる。
(2009/4/11記)