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よくわかる音響の基本と仕組み 若宮真一郎著 [3:音響関連]

音に関して「科学」「技術」「文化」の3つの観点から解説した本。

イラストやグラフが多用されており、音響に関する言葉が理解しやすい内容となっています。初心者向けの音響に関する解説書をいろいろ読んでみましたが、この本と「音のなんでも小事典」の2冊があれば全体像をつかめるのではないでしょうか。おすすめの一冊。

雑誌や本を読んでいると、楽器やCDの音質について「金属的な音」「抜けのよい音」「きれいな音」といった表現がなされることがあり、『この表現とマイクで録音された音源の波形曲線の形状をどのように結びつければいいのか?』とつねづね疑問に思っていました。

この「よくわかる音響の基本と仕組み」では、文章だけでなくイラストやグラフを多く用いることにより、直感的に音質を捉えるために必要な概念をとらえやすく工夫されています。ここでコツをつかめば、波形編集ソフトによる音質調整において大きな助けとなるでしょう。

特に印象に残ったのは、人の声や楽器音を特徴づける要素について。
例えば「あ、い、う、え、お」の母音と強調される周波数の関係図は分かりやすいものでした。1kHz付近の「第一ホルマント」と3kHz~4kHzの間の「第二ホルマント」の二つの領域での周波数ピークと母音の関係で母音が整理できるという考え方は、楽器の音色の解釈にも応用でき、音作りにおいて参考になります。

 



 

<ノート>

・音について
 音は空気の振動。(縦波・粗密波)
 複合音は純音の組み合わせに分解できる。


・ノイズ
 ノイズには「ホワイトノイズ」「ピンクノイズ」「バンドノイズ」などがある。 周波数帯に対する音圧の高さで分類される。


・球面波と平面波
 球面波は点音源。音源から離れるほどエネルギーが減衰する。
 平面波は面音源。距離を隔てても音が減衰しにくい。


・難聴
 難聴には2種類ある。
①感音性難聴
 ある周波数以下が聞こえない。

②伝音性難聴
 すべての音圧において、感知レベルが下がる。
 加齢により、特に1kHz以上の領域が聞こえにくくなる。


・音色
 音色を決める因子は3つ。
 1.金属性因子
 2.迫力因子
 3.美的因子・・・好ましい音:1kHz付近がピークの周波数分布。音圧レベルは中庸。高次倍音のレベルが小さい。


・鈍い音と鋭い音
 鈍い音は低周波数側の音圧が高く、鋭い音は逆の傾向。


・きれいな音と汚い音
 汚い音は周波数ピークが多く、きれいな音はピークが少ない。


・人の声
 ア・イ・ウ・エ・オの母音は、1~5kHz付近の周波数帯のピークの分布形態によって特徴づけられる。母音のスペクトル上でエネルギーの集中する場所を「ホルマント」と呼ぶ。ホルマントはオーボエ、バスーン、バイオリンなどの楽器音においてもみられ、楽器音の特徴を決める要素である。


・楽器音
 楽器音は「周波数スペクトル」と「振幅の時間エンベロープ」によって特徴づけられる。ピアノの低域の弦は棒の性質を帯びているため、低音の倍音がずれる。弦が細いと調波成分(倍音に関係する音)が出る。

 


 

図解入門 よくわかる最新音響の基本と仕組み (How‐nual Visual Guide Book)

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  • 作者: 岩宮 眞一郎
  • 出版社/メーカー: 秀和システム
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 単行本