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自動車のサウンドデザイン 石濱正男著 自動車技術 vol.62,No.2,2008. [3:音響関連]

音響関連の本を読んでいて、自動車や家電製品で音のデザインを行なっているという説明を何度か目にしています。そこで、自動車のサウンドデザインについて調べてみました。

最近は環境への関心の高まりから、トヨタのプリウスやホンダのインサイトが売り上げを伸ばしています。ハイブリッド車はモーター走行時に走行音が静か過ぎて歩行者に気づかれないという問題が出てきているようなので、ハイブリッド自動車の走行音作りが各メーカーの課題になってくるかもしれません。


 

<ノート>

・自動車のサウンドデザイン
音は製品の正確を表現する。製品に期待される固有の音がある。
自動車のハードウェアと、それが使われる環境、運転方法、感じる人間、それらを全部含めたものがサウンドデザインとなる。

・計測器による音質測定
マイクで収録した音の波形を信号処理し、人間の判断に近い指標とする。指標は以下のようなものがある。
◎騒音レベル
人の聴覚特性を表現した周波数フィルタ(A特性)を通した指標。
◎ラウドネス
音のマスキング効果を考慮して、多くの周波数成分を含む騒音の「大きさ」を表現する。
◎ラフネス
音の粗さを表現する指標。2つの異なる周波数の音を別の音として聞き分けられる周波数間隔を「臨界帯域幅」と呼び、この帯域に2つの音が存在すると、混ざって粗い感じを与える。ピアノで半音あるいは1音上のキーを同時に叩くと濁った音、粗い音が聞こえるが、これを「ラフネスが大きい」と表現する。
◎シャープネス
騒音を構成する周波数成分の中で、1kHz以上の高周波成分の割合を示す指標。「金属感」と対応。
◎変動感
振幅の変動する音。「うなり」や風音の息つきなど。
◎トーナリティー
騒音の成分のうち、周期的成分の割合を示す指標。

・ラフネスの発生例
「かさかさ」、「ごろごろ」した粗い音は嫌われたりする一方でパワー間を与える要素でもあり、注目される現象。近寄った周波数成分があると発生する。重なり合う高調波であれば濁らない和音となるが、近い周波数成分が重なり合うとラフネス、粗さが生じる。

原因の例
 - エンジンの気筒ごとに生ずる燃焼音の不揃い。
 - 回転体の振動。(クランク軸など)


・遮音から吸音へ
従来の車室の音響設計は、外部騒音の侵入を極力防ぐ「遮音」を重視してきた。しかし、遮音には壁の密度が高くなければならず、軽量化とは相反する。そこで、騒音の侵入はある程度覚悟し、その代わり軽量の吸音材を多用して多用してすぐに音を減衰させる、という考え方が生まれてきた。つまり初期振幅小で長く続く波形よりも初期振幅大で短時間に収束する波形を選ぶ設計。感覚的には「抜けが良い」という表現。

→自動車防音技術はメーカーによって設計思想が異なる。例えばBMWは今でも遮音材一本であり、車内はゴムの遮音材で覆われ、吸音材は一切使っていない。(クルマはかくして作られる 3

 

<参考>

排気音のサウンドデザイン(超クルマはかくして作られる)

 



・自動車技術会
 http://www.jsae.or.jp/

 

 



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